飲食店の「仕込み代行」で売上高21.5億円 “倒産1000件時代”に急成長する企業とは?(5/5 ページ)
2025年、飲食店の倒産件数が1000件を突破した。そんな中、飲食店の「仕込み代行」ビジネスで急成長している企業がいる。シコメルフードテックの川本傑社長に話を聞いた。
シコメル、OEMと何が違う?
製造を外注するというシコメルの仕組みは、OEMというやり方で以前から存在していた。飲食店はこれまでも食品工場と連携してきたにもかかわらず、なぜシコメルの導入が進んでいるのか。
「食品工場は認可制のため、肉を扱っているところでスイーツは作れないんですよね。なので外注する場合、肉はA工場、スイーツはB工場などと分けて発注する必要がありました。さらに、工場によって発注・納品の仕様や支払い方法、配送ルールなどが異なるため、その都度対応する必要がありました。効率化しようと思っているのに、逆に工数が増えるという問題が発生していたのです。そういう問題を解決できるのが、当社の強みだと思います」
飲食店の課題を正しく捉えたことに加え、アフターコロナでの外出需要やインバウンドが追い風となり、シコメルフードテックは堅調に成長。2025年の売上高は21.5億円に上った。
順風満帆なように見えるが、川本氏は中小規模の飲食店と対峙する中で見えてきた課題について、以下のように説明する。
「『手作り』を大事にしている飲食店さんは多いです。人手不足が加速している日本において、店でやるべきものと工場に任せても大丈夫なものを分けて取り組んでいかないと取り残されてしまうと思います。学生アルバイトに仕込みを任せるのも大変ですし、外国人の技能実習生もいますが、出汁の取り方とか難しいですよね。そういった文化もないでしょうし」
人件費や物価高騰が続く日本において、自分たちだけで店を回そうとする場合、値上げなど方法は限られる。単価を引き上げたことで客離れが起こってしまったら本末転倒だ。そういった小規模店舗をサポートするサービスとして、シコメルフードテックは2025年9月に「シコメルメニューブースト」を発表した。
同サービスでは、仕込み済み食材と販促素材をセットで毎月提供する。店舗側は自ら新メニューを開発したり、販促物を一から制作したりする必要がなく、届いた商品を解凍・最終調理することで客に提供できる。店舗側は仕込み工数を削減しながら新商品を展開できるため、追加の人員を抱えずに売上向上が目指せる仕組みだ。
また、同サービス内で提供される仕込み済み食材は、シコメルフードテックがこれまでOEM事業で開発・製造してきた商品から選定している。仕込み済み食材の元となるメニューを提供した飲食店に対して、食材売上の2%を還元する仕組みを採用。小規模飲食店にとっては、自店舗での営業に加え、新たな収益源を持つ選択肢にもなっている。
「これまでのビジネス経験を踏まえて、思ったんですよね。ビジネスは金融市場に近い方が儲(もう)かる。一方で、飲食店のような日常のサービスに近づけば近づくほど労働集約型になり、稼ぐのが難しくなります。ラクスルさんのような仕組みを飲食業界でも成立させることができたら、この世界を少しは変えられるのではないかと思いました」
飲食店の倒産が過去最多を更新する中、現場の努力や精神論だけでは立ち行かない局面に入っている。全てを店内で抱え込むのではなく、任せられる工程は外に出し、本当に価値を生む部分に集中する。シコメルフードテックが提供するのは、単なる効率化のツールではなく、店が本当に力を注ぐべき領域を見極めるための“分業”という経営の再設計だ。
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