売上8割減の崖っぷち運送会社が見つけた、大手もレンタカーも手を出せない「空白地帯」を埋めるサービス(3/5 ページ)
大手の運送会社に依存していたことから、売り上げの8割を失ったハーツ。さまざまな試行錯誤を経てたどり着いた、大手もレンタカーも手を出せない「空白地帯」を埋めるサービスとは?
個人向け事業のヒントとなった「鳥人間コンテストの大学生」
1社依存のリスクを痛感した山口氏は、顧客ポートフォリオを分散させるべく、BtoC事業への可能性を模索し始める。1社との「1対1」の関係から、不特定多数とつながる「1対1000」の関係へ拡大することで、経営への影響を最小限にするための決断だった。
2003年、当時まだ珍しかった自社の公式Webサイトを立ち上げ、まずは引っ越し業に参入した。しかし、待ち受けていたのは激しい値下げ競争と3月に需要が偏る「季節性」の壁だった。平日の売り上げがゼロになる日も珍しくなく、ジリ貧の状態が続いた。
売り上げの8割を失って以来、山口氏は常に「会社の死は、代表である自分の死」という極限の危機感の中にいた。その切実さは、かつて戦地に赴(おもむ)いた経験を持つ叔父を訪ね、死生観を問いにいくほどだったという。
「お金が尽きていたら、会社をたたんでいたかもしれない」
そんな崖っぷちの状態にあった2005年、1つの依頼が舞い込む。東京理科大学の学生から依頼された、「鳥人間コンテスト」に出場するための機体の運搬だった。
山口氏は運搬の現場に立ち会い、学生たちの様子を観察し続けた。「現場に答えが落ちている」と考える山口氏は、学生たちが置かれた状況からある仮説を立てる。
「彼らには大型車を運転する免許も経験もない。一方で、既存のレンタカーでは返却の手間や運転の不安がある。かといってフルサービスの運送業者に頼むほどの予算もない。自分たちでやりたい部分とプロに任せたい部分の隙間に、ニーズがあるのではないかと考えました」
この「セルフサービスとプロの運送の中間」に商機を見いだした山口氏は、居酒屋チェーン「つぼ八」の創業者・石井誠二氏からの助言も受け、中小企業庁が扱う「経営革新支援法」の承認を取得した。中小企業が新商品開発や新サービス導入などの「経営革新計画」を策定・承認を受けることで、政府の融資・保証の優遇、補助金、専門家派遣などの支援を受けられる制度だ。
模倣されるリスクへの不安もあったが、石井氏の「今の状況と変わらないのだからやってみろ」という言葉に背中を押された。そして2006年6月、運転手付きレンタカーという新しい発想のサービス「レントラ便」が産声を上げた。
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