「出社したい」だけじゃない キリンHDがリニューアルした“行動を変える”オフィスとは(3/4 ページ)
キリンHDは2026年1月、東京・中野に構えるグループ本社をリニューアルした。単なる執務空間の刷新にとどまらず、長期経営構想「Innovate2035!」の実現を見据えたリニューアルだという。オフィスリニューアルの背景と狙いについて、同社に話を聞いた。
「Go to 現場」の姿勢
オフィスリニューアルにおいて、蘇氏がこだわったのが「現場の声」だ。オフィスリニューアルに際し、まず、中途入社や外国籍の従業員、新卒を中心に声を集めたという。
「中途入社は、それまで勤務した他のオフィスと比較しながら意見を出してくれます。外国籍の従業員の多様なバックボーンや新卒の新しい目線は、我々では気付かない指摘やアイデアを生み出します。もちろん、長年在籍する従業員の声も大切ですので、こちらは人事担当者を通じて集めました」(蘇氏)
加えて検討チームが徹底したのが「Go to 現場」の姿勢だ。机上の議論にとどまらず、自ら足を運んで確かめるという、キリングループが大切にしている考え方を、オフィスリニューアルの際にも大切にしたという。「社外の勉強会や他社のオフィス見学に何度も参加しました。こうして得た知見と現場からの声を取り入れながら、リニューアルを進めていきました」(蘇氏)
「使われるオフィス」を育てる仕組み
オフィスはリニューアルして終わりではなく、従業員に使われなければ意味がない。キリンが注力したのは、環境を整備すると同時に、ルールとデータによる改善サイクルを整えることだった。
ルール面では、18階のイチハチTRACKと執務フロアの役割を明確に分けた。19〜21階は執務専用で、イチハチTRACKは原則として会議を禁止。仕事を持ち込ませないことを徹底した。ただし気軽な打ち合わせや1on1、雑談はOKだ。この線引きがリフレッシュと交流の場としてのイチハチTRACKの役割を守っている。
テクノロジー活用では、座席の混雑状況を可視化するシステム「nomachi」(ノマチ)を導入した。各テーブル下のセンサーで着席状況を検知し、各執務フロアに設置したサイネージにリアルタイムで表示する。混雑状況が一目で確認でき、空いていれば足を運ぶきっかけになる。どのエリアが何時に混み合うかというデータも蓄積されるため、今後のレイアウトの見直しや運用ルールの調整への活用も見込んでいる。
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