「出社したい」だけじゃない キリンHDがリニューアルした“行動を変える”オフィスとは(2/4 ページ)
キリンHDは2026年1月、東京・中野に構えるグループ本社をリニューアルした。単なる執務空間の刷新にとどまらず、長期経営構想「Innovate2035!」の実現を見据えたリニューアルだという。オフィスリニューアルの背景と狙いについて、同社に話を聞いた。
カフェに共創エリア 「イチハチTRACK」の仕掛け
リニューアルでは、4つのポイントにこだわった。部署を超えた偶発的な出会いを生む「交流機会の拡大」。非日常の空間でアイデアを引き出す「共創機会の創出」。従業員の心身の健康促進を支援する「リフレッシュエリアの拡大」。そしてグループの多様な事業に触れる「ブランド体験の創出」だ。
「4つのポイントは独立して見えて、実は絡み合っているのです。例えばカフェでリフレッシュしながら会話が生まれれば、それは交流であり共創の種でもある。グループの商品に触れれば、それ自体がブランド体験になります」(髙津氏)
今回リニューアルしたのは、19〜21階の執務フロアと18階の共用エリアだ。これまで各執務フロアに点在していたリフレッシュスペースを18階の共用エリアに集約し、仕事とリフレッシュの空間を明確に分けた。18階の共用エリアの名前は従業員投票により決定し、床面に描かれたウォーキング用の陸上トラックと、18階の「18(イチハチ)」に由来する「イチハチTRACK」と名付けられた。
イチハチTRACKの中でも注目を集めるのがカフェだ。グループ本社にはこれまで、常設のカフェや食堂がなく、設置を望む声が上がっていたという。ただし、単に「従業員が望んだから作った」わけではない。カフェという一つの場所に、先述の4つのポイントが重なるよう設計されている。
カフェには自然と人が集まる。つまり、「部署が違う」「階が違う」など、普段はめったに顔を合わせる機会がない人たちが集まる、「共創機会の創出」の場所なのだ。
さらに、提供するドリンクにも仕掛けがある。メニューはすべてグループのブランド商品を使ったオリジナルドリンクだ。レシピは、それぞれの開発担当者が考案したものを取り入れるなど、社内の知見が反映されている。季節に応じた入れ替えも行い、終業後には週1で酒類も提供する。一杯のドリンクを通じてグループのさまざまな事業に触れる「ブランド体験」が組み込まれているのだ。
カフェの隣には「WELLNESS SELECT」という、キリングループが手掛けるヘルスサイエンス商品を展示・販売するセレクトショップを設置。肌診断や血管年齢の測定もでき、従業員が日常的に自身の健康と向き合いながら、ヘルスサイエンス事業を知るきっかけになる。
共創や交流を目的としたエリアには、「BAR」「CAMP」「YATAI」という3つのテーマ空間を設けた。従来のオフィスとは異なる非日常感を演出し、自然な対話やアイデアの共有を促す狙いだ。「CAMPでは、実際にキャンプをしているかのように、円卓を囲んで話ができます。会議室とは異なり、全員の顔がちゃんと見えるので、いつもより話が弾む印象です。休憩中の雑談はもちろん、チームのブレインストーミングでよく活用されています」(蘇氏)
その他にも、卓球台やエアロバイクを備えた「PLAYGROUND」、マッサージチェアやリクライニングチェアを置いた「RECHARGE SPOT」、社員が本や趣味の品を展示できる「SHARE SHELF」、大型モニターを設置した「PITCH」、そして新規事業の展示コーナー「CO-LAB」といった、多種多様なスポットがある。
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