「出社したい」だけじゃない キリンHDがリニューアルした“行動を変える”オフィスとは(1/4 ページ)
キリンHDは2026年1月、東京・中野に構えるグループ本社をリニューアルした。単なる執務空間の刷新にとどまらず、長期経営構想「Innovate2035!」の実現を見据えたリニューアルだという。オフィスリニューアルの背景と狙いについて、同社に話を聞いた。
コロナ禍で、多くの企業がリモートワークを導入した。慣れない勤務形態に最初は戸惑いながらも、通勤時間の削減や家族の体調不良へ柔軟に対応できるなど、そのメリットを実感した人も多いだろう。
以前のように出社が可能となった今でも、リモートワークへの需要は高い。自宅で仕事ができることを実感した今だからこそ、企業はこれまでに以上に「なぜ出社させるのか」を問われるようになった。出社の意義を模索する中で、オフィスへの投資を検討する企業が増え始めている。
キリンホールディングス(HD)は2026年1月、東京・中野に構えるグループ本社をリニューアルした。単なる執務空間の刷新にとどまらず、長期経営構想「Innovate2035!」の実現を見据えたリニューアルだという。オフィスリニューアルの背景と狙いについて、同社人財戦略部 企画・組織開発担当の髙津太士氏と蘇嘉凌(ソカリン)氏に話を聞いた。
オフィスリニューアルの背景に2つの課題
コロナ前まで、キリングループの働き方は出社が前提だった。フレックス制度や在宅勤務制度は整備されていたものの、活用は限定的だったという。コロナ禍では国の要請に従い出社率を制限し、リモートワーク中心の働き方に。2022年には6フロアあったオフィスを4フロアに縮小する1回目のリニューアルを実施した。コロナ禍が収束してからも、同社は出社とリモートを選択できるハイブリッドワークを続けていた。
2024年頃から出社する社員が増え始め、コロナ禍で3割以下だった出社率は、約7割まで上昇した。「キリングループでは、働く場所は社員に委ねています。自分のアウトプットを最大化できる場所を、自分で選んでほしいという考えからです」(髙津氏)。会社が強制したわけではなく、従業員に働き方を委ねた結果、出社を選択する人が増えてきたのだ。
出社する従業員が増えれば、当然歪みが生じる。会議室の不足や、本来は休息に使うはずのリフレッシュスペースの業務利用が目立ち始めたのだ。働き方の変化と出社状況に当時のオフィスが合わなくなっていたことが、今回のリニューアルにつながった。
髙津氏によると、今回のリニューアルの理由はそれだけではないという。キリングループは2035年に向けた長期経営構想「Innovate2035!」を策定。祖業のビール事業に加え、子会社であるファンケルやブラックモアズが手掛けるヘルスサイエンス事業を成長の柱に据えている。2035年には酒類、ヘルスサイエンス・飲料、医薬の3事業でバランスよく収益を上げる体制を目指している。
だが、「キリンといえばビール」というイメージは、社内外で根強く浸透している。「長期経営構想の実現には、キリンに対するお客さまの認識を変えていく必要があります。そのためにも、まずは従業員に『キリンは健康やウェルビーイングにも取り組んでいる会社だ』と意識してもらわなければいけません」(髙津氏)。グループ全体の事業や価値観を共有する場が求められていたのだ。
「働き方の変化に合わなくなったオフィス」と「長期経営構想の実現に向けた環境整備」を両立する施策として、オフィスリニューアルプロジェクトがスタートした。
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