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66.6億円の大赤字から4年で最高益へ 「ぴあ」は何を変えたのか?(4/4 ページ)

コロナ禍の2022年度に「66億円」もの赤字を計上した、ぴあだったが、そこから逆転し、4年で最高益を記録する。同社のV字回復の要因を解説する。

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危機の中でぴあが行った「変身」とは

 ぴあの回復を語るうえで最も重要なのは、同社がコロナ禍をただ耐えたのではなく、危機の中で事業構造の組み替えを進めたことです。ぴあがコロナ禍で推し進めてきた施策として以下のものがあります。

  • ライブ配信サービス「PIA LIVE STREAM」の拡大
  • ワクチン接種予約システムの提供
  • ぴあアリーナMMの運営
  • 三菱地所との業務・資本提携
  • デジタル事業の分社化および再編

 象徴的なのは、ライブ配信サービス「PIA LIVE STREAM」の拡大です。リアル公演が開催できない中でも、アーティストと観客をつなぐ場を「オンライン」で提供し、エンタメ企業としての接点を維持しました。これは一時しのぎに見えて、実は「観客とつながる手段を増やす」という意味で、ぴあの事業領域を広げる動きでもありました。


PIA LIVE STREAM(画像:PIA LIVE STREAM公式Webサイトより)

 また、チケット販売システムを応用したワクチン接種予約システムの提供も、ぴあの変化を象徴しています。そもそも、ぴあは大量の申込を受け付け、抽選し、割り当て、当日に入場管理まで行う仕組みに長けています。その経験を生かすフィールドは、必ずしもライブやスポーツだけとは限りません。危機の最中に、自社の本質的な強みを「イベントの外」へ広げたことは大きいといえるでしょう。

 自社会場「ぴあアリーナMM」の存在も、ぴあのV字回復に欠かせない要素です。自前の会場を持つことで、チケット販売だけでなく、主催・運営・協賛・物販・飲食・VIP向けサービスまで含めたバリューチェーンを取り込むことができます。これは従来の販売手数料中心のビジネスより、はるかに厚みのある収益モデルを構築しています。


2020年に開業した「ぴあアリーナMM」(画像:ぴあアリーナMM公式Webサイトより)

 また、コロナ禍においての三菱地所との業務・資本提携も見逃せません。この提携は、ぴあアリーナMMを起点として、「集客エンタテインメント」と「街づくり」を一体化させる狙いを持つものでした。コロナ禍で低下した財務基盤の強化という意味合いもあり、ぴあにとっては、まさに一石二鳥の施策だったといえるでしょう。

 2020年3月に、新ぴあ(アプリ)を含むDMS(デジタルメディア・データマーケティングサービス)事業においては、コロナ後の成長・拡大の道筋を確実にするべく、新会社「ぴあネクストスコープ」を新設分割しました。

 チケット販売以外の収益源を育てやすくなるなどのメリットがあるためです。チケット販売で得た膨大な会員データを活用することで、高付加価値で活用が可能となります。コロナ禍で、売るチケットがないと苦しくなることから得た教訓といえるでしょう。

 ぴあネクストスコープは、2022年10月1日に朝日新聞社および日本アジア投資への一部株式譲渡を行い、現在は「ぴあ朝日ネクストスコープ」となっています。

最後に

 ぴあのV字回復は、単なるコロナ明けの自然反発だけではありません。市場回復という追い風があったのは確かですが、それだけでここまで利益を伸ばすのは難しかったでしょう。

 会場を持ち、主催に関わり、VIP向けサービスを育て、国際イベントを受託し、デジタル接点を広げる、といった「稼ぎ方の多層化」が、回復局面で一気に数値化できたのです。

 V字回復という言葉は派手ですが、本質は「以前の自分に戻る」ことではなく、いかに「変身」するかにあるといえるでしょう。

著者紹介:宮本建一

大阪府立大学経済学部卒。第二地方銀行にて預金・融資業務、消費者金融では債権回収、信用組合においては融資・経理・審査管理に従事。

現在はフリーライターとして、資金調達・資金繰り、銀行融資、ファクタリング等の金融ジャンルを中心に執筆する。

審査・回収・債権管理といった現場経験を踏まえ、制度や数字の解説にとどまらず、実務上の論点や注意点まで整理して提示することを得意とする。

中小企業の資金繰り改善や金融機関対応に関する記事実績多数。金融機関向け通信講座教材の企画・執筆経験あり。

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