「本社の指示は、あえて無視した」 800億円の価値を生んだ、バーガーキングの「弱者の戦略」(2/2 ページ)
ゴールドマン・サックスがバーガーキングの日本事業を800億円で買収した。かつては赤字と店舗閉鎖に苦しんだ同社は、なぜここまで評価を高めたのか。独自価値に集中した戦略に迫る。
「ヤドカリ戦法」で店舗拡大
店舗の拡大においても、同社は合理的なアプローチをとっている。2028年末までに、現在の338店舗から600店舗まで店舗を増やす目標を掲げているが、好立地はすでに競合他社に押さえられているのが実情だ。
そこで野村社長が展開しているのが「ヤドカリ戦法」だ。
「現在、マクドナルドさんはドライブスルーの多レーン化や駐車場の拡充を目指し、既存の立地からより広い場所へと移転を進めています。私たちはその跡地を狙っています」
また、昨今のデリバリー需要を受けて、デリバリー専門のサテライト型店舗を作る構想もあるという。
600店舗に向けて バーガーキングの転換期
急速な出店拡大とブランド認知の向上により、バーガーキングはもはや「無名の後発」ではなくなっている。
「2028年までに600店舗」という目標が現実味を帯びれば、競合他社からの見られ方も変わってくる。これまで成長を支えてきた“弱者の戦略”は同じように機能し続けるのだろうか。
加えて、ゴールドマン・サックス傘下に入ったことで、ガバナンスやコンプライアンスといった観点もより重視されるようになる。これまでのようなスピード重視の経営に加え、次の売却などを見据えた経営体制への進化が求められる。
そこで同社が進めているのが、次世代リーダーの育成だ。野村社長は「自分のやり方をそのまま踏襲する必要はない」と語る。むしろ、自らの戦略や意思決定に対して「それは違うのではないか」と異を唱えられる組織作りが重要だという。
社内では「社長が言ったからやる」という判断を禁句とし、現場が自律的に考える文化の醸成を進めている。
バーガーキングは新たなフェーズに入っている。弱者として戦ってきた戦略を越え、“確固たる2番手”として選ばれ続けるブランドになれるか。その真価が、いま試されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
バーガーキング「800億円買収」の衝撃 なぜゴールドマン・サックスは「日販3倍」の成長に賭けたのか
米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)によるバーガーキング日本事業の買収は、外食業界で大きな話題となった。世界有数の金融機関が巨額の資金を投じてでも手に入れたかった企業に今、何が起きているのか。バーガーキング運営会社の社長に、この買収劇の背景と今後の展望を聞いた。
「倍々ゲーム」のバーガーキング 人気の背景と「600店舗」に向けた死角とは
近年、好調のファストフード業界の中で特に存在感を発揮しているバーガーキング。あらためてその要因を探るとともに、さらなる急拡大に向けた死角を解説する。
なぜロッテリアは消え、ドムドムは残ったのか ハンバーガー市場で分かれた2つの道
飽和するハンバーガー市場で、中小チェーンの戦略が二極化している。ブランドと物語を守り、コアファンの支持で生き残るドムドム。一方、ロッテリアはゼッテリアへ転換し、効率重視の道を選んだ。対照的な2社の選択から、外食業界の現在地を読み解く。
