大成建設、転勤手当に最大100万円 経営幹部が現場を回って得た“気付き”とは(3/3 ページ)
大成建設は2025年7月、転居を伴う異動に対して最大100万円を支給する制度を新設した。制度新設の背景には、経営幹部が全国を回る中で得たある気付きがあった。制度の詳細や社員の反応を、同社に聞いた。
制度はあえてシンプルに設計
井上: 転勤手当の制度を設計する上で気を付けた点はありますか。
緒方氏: 支給ルールが複雑にならないようシンプルに設計したことです。転勤による移動距離を段階的に設けるのと、家族帯同の有無という分かりやすい条件で、支給金額を決めています。
「社員のために」と思って作った制度なので「複雑すぎて自分にいくら支給されるか分からない」といった印象を持たれることで、利用しづらい制度にしたくなかったためです。
泉谷氏: また、人事制度改革を行った際に、転勤手当も含めて制度の周知をさまざまな方法で実施しました。オンラインや各支店を回った説明会に加え、ガイドブックの配布、制度解説動画の公開など、周知にはかなり力を入れました。
井上: 導入後の反響はいかがでしょうか。
北村氏: 当初の目的としては、金銭的負担を軽減し、心理的ハードルを下げることで、転勤に対して前向きな気持ちになってくれることを期待していました。導入後は、社員から「会社が配慮してくれていると感じている」といった声が寄せられています。
井上: 社員の定着や多様な働き方を支援する上で、転勤手当の他に、貴社はどのような取り組みをされているのでしょうか。
泉谷氏: キャリアパスの見える化にも注力しています。具体的には、年次ではなく、担う役割や成果に応じて評価する「役割等級制度」を導入しました。「どのようなスキルを身に付ければ、どの程度の報酬が得られるのか」という道筋を明確にしています。
「社員にかけるお金は未来への投資である」という経営の意思が伝わることで、社員側の理解と信頼も深まっています。今後も、一人一人の成長と挑戦を後押しする投資を続けていきたいと考えています。
編集後記
大成建設が開始した最大100万円の転勤手当。金額以上に、筆者が注目したいのはその決定に至るまでの「従業員との対話」というプロセスです。
従業員は働く上でさまざまな不安を抱えています。その中には目に見えやすい年収や評価だけではなく「育児や介護との両立ができないのではないか」「自分の描きたいキャリアが実現できるのか」といった生活や将来に直結する悩みもあります。
転勤に関していえば「家族と一緒に生活ができないのではないか」「縁のない地で生活していけるだろうか」という不安が離職リスクにも直結します。しかし、個人の事情や内面的な不安はアンケートではなかなか表面化しにくいという実態もあります。このような不安に、経営幹部が現場を回りながら対話することで気付き、向き合った結果が大成建設の転勤手当に現れています。
また、転勤手当を含む新しい人事制度の周知も、人事部門が各支店を回って直接説明をしています。「従業員との対話」は、人事部門の重要な役割の一つです。制度を作るだけでなく、会社が対話をする姿勢があるという事実そのものが、従業員の安心感を生み、働く上での満足度や定着率向上へとつながるのではないでしょうか。
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