ロート製薬「エントリーシート選考廃止」は、30年続く“とりあえず就活”を変えるか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
「エントリーシートによる書類選考廃止」を発表したロート製薬。同社の取り組みは、1990年代から30年以上続いた“とりあえず就活”を変えるでしょうか。
果たして、1990年代から30年以上続いた「エントリーシート文化」終焉のきっかけになるのでしょうか。
あの手この手で学生との距離を縮めてきたロート製薬が、2027年4月入社の新卒採用から「エントリーシートによる書類選考廃止」を発表しました。生成AIの普及により応募書類の内容が均質化していることが廃止の理由で、代わりに人事担当者との15分間の対面による選考「Entry Meet(エントリーミート)採用」を導入するそうです。
AI採用が広がりを見せる中、アンチAIに舵を切ったロート製薬。創業126年の歴史を持つ製薬企業である同社は、12年前の2013年に「とりあえずシューカツ・とりあえず学生を集める」という風潮の中、「とりあえずやめます!宣言」をした企業です。
ロート製薬が「とりあえず」をやめるまで
当時、学生たちはまるで懸賞品に応募でもするように“とりあえず”スマホをポチっとし、企業の採用担当者たちは「”とりあえず”学生を集めないと上からプレッシャーがかかる」と学生集めに奔走。さばききれないほどのエントリーシートに四苦八苦していました。
しかし、厳しい就職戦線を制した学生がすぐ辞めてしまう事態が散見されるようになり、「就活エリート」なる言葉が生まれることに。そんな状況に疑問を抱いたのが、ロート製薬です。
「ロート製薬に思いを持った人だけに会う方法はないか」との思いから、就職情報サイトからのネット募集をやめ、応募を電話受け付けに変更します。結果、学生からのエントリーは800人程度に減り、学生と向き合える余裕はできたものの、「熱い思いを持つ学生」になかなか出会えなかったそうです。
そこで、2014年4月入社の新卒採用から「とりあえずやめます!宣言」のもと、全国約30の大学にロート製薬の社員が出向き、直接会った学生からだけエントリーシートを受け付けるようにしました。とりあえずエントリー、とりあえず学生集めをやめたのです。
当時のロート製薬の公式Webサイトには、「直接会ってお話をしたい」との言葉が踊り、私はそれを見ていたく感動したのを覚えています。実際、採用に関わった人にインタビューしたところ「学生も企業も“とりあえず”に逃げ、思考停止に陥っていた。あえて手のかかる直接対話に踏み切った」と話してくれました。
そして、今回打って出たのが、「とりあえずAIやめようぜ!」ということなのでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「また休むの?」子育て社員に“絶対言えない本音”──周囲が苦しむサポート体制から脱せるか
人に寄り添った“あたたかい制度”であるはずの「育児休暇制度」。しかし、現状はたくさんの人がしんどい思いをし、不機嫌になっている。こうした中、子育て社員と子育て社員をサポートする社員の「心の壁」を解決しようと、会社側が動き出した。
“静かな退職”は悪じゃない なぜ「日本人は休めない」のに「生産性が低い」のか
一時期に比べれば、日本の長時間労働もやっと改善され、残業を美徳とする社会の風潮も薄れました。しかし一方で、いまだに「うまく休めない問題」は解決されていません。
早期退職ブームの裏で 中高年を「頼れるおじさん」に育てられる職場、3つのポイント
希望退職という名の“肩叩き”が拡大する一方で、“潜在能力”に期待し能力発揮の機会を拡大する企業が増えてきました。50歳になった途端、まるで在庫一掃セールにでもかけるように、賃金を下げ、閑職に追いやり、「早くお引き取りいただきたい」圧をあの手この手で企業はかけつづけてきましたが、その不遇にピリオドを打つ動きが広がりつつあります。
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない
上司と部下の1on1ミーティングを実施する企業が増えています。「若手社員のために!」と経営層や人事が意気込むものの、現場からは戸惑いの声も……。なぜ、日本企業では1on1がうまく機能しないのでしょうか。
