LINEを避ける人たちは何を使うのか “安全神話”Signalの実力と盲点:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
スマホのメッセージングアプリで、安全性を売りにしているのが米国発のSignalだ。強力な暗号化によってセキュリティを高めているが、サイバー攻撃の標的にもなっている。ビジネスでもチャットアプリの利用が増えており、セキュリティ意識を高めるべきだ。
ビジネスチャットの安全性にも注目
この攻撃は、決して高度なものではない。要するに、これまでもサイバー空間でありふれた手口として知られてきたフィッシング攻撃である。
ところが、すでに要人がこの種の攻撃の被害に遭ったケースも報告されている。しかも引っかかったのは、ドイツの情報機関であるドイツ連邦情報局(BND)の元副長官だったから笑えない。
元副長官は、Signalの「サポート」を名乗る人物からメッセージを受け取り、使用する際にセキュリティのために設定するPINコードの入力を求められた。その要求に応じてコードを入力してしまい、被害に遭った。
フィッシング攻撃の知識があれば、こんな単純な手には引っかからないだろう。どんなに安全なアプリを使っていても、フィッシング攻撃に引っかかってしまえば、自分のスマホは守れないということだ。
私たちの生活に不可欠になったメッセージングアプリは、日常的に利用されている。それだけに、セキュリティにも意識を向けたいところだ。最近ではビジネスシーンでも電子メールよりもチャットが使われることも増えており、今後もその傾向は強くなると見られている。そうなると、企業などで使う個人間のチャットも、サイバー攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)であれば、リスクが高くなる。
メッセージングアプリの安全性を重視するなら、Signalは有力な選択肢となる。ただし、組織としての運用ルールやリテラシーが伴わなければ、その効果は限定的だ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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