フジクラが米ビッグテックに指名買いされる理由 生成AIが伸びると、なぜ「光配線」が儲かるのか:AI革命、日本企業の勝ち筋(2/3 ページ)
生成AIの普及が加速する中、その恩恵を受けているのは半導体やソフトウェア企業だけではない。米ビッグテックから「指名買い」される光ファイバー大手フジクラの岡田直樹社長に、AIの裏側で起きている構造変化を聞いた。
「売れない光ファイバー」からの逆転劇
フジクラの光ファイバー事業は、かつて会社の稼ぎ頭だった。1980年代から2000年ごろにかけて、NTTとの共同開発で日本国内の光ファイバーインフラを整備し、安定した収益を上げていた。
だがインフラビジネスには「社会の基盤が整ってくると、それ以上必要なくなる。水道や下水と同じで、普及率が99%を超えると仕事がなくなってしまう」という宿命がある。国内需要が一巡し、事業は赤字に転落した。
海外に出ようにも、日本の光ファイバーのケーブル構造は国際標準とは全く別物だった。岡田社長の言葉を借りれば「スマホの世界にガラケーを売りに行っているようなもの」。中国で世界標準品の量産も試みたが、後追いでは勝負にならず3年で撤退した。
「日本のデファクトスタンダードでもない、世界のデファクトスタンダードでもない、フジクラオリジナルで勝負するしかなかった」
追い詰められた末に生まれたのが「SWR(Spider Web Ribbon)」だった。
従来の光ケーブルは、光ファイバーを平らなテープ状に束ねて積層する構造だった。そのため断面には空きスペースが多かった。SWRはファイバー同士を一定間隔で接着することで柔軟に変形できるようにした。丸く束ねるとファイバーが隙間なく詰まり、ケーブル内部の空きスペースを大幅に削減できる。
両側の光ファイバーを持って広げるとクモの巣のように見える独自の形状から「Spider Web Ribbon」と名付けた。
さらにSWRを高密度に収納するケーブル構造「WTC(Wrapping Tube Cable)」を開発。両者を組み合わせ、1本のケーブルに1万3824本もの光ファイバーを収めることを可能にした。
顧客が買っているのは「トータルコストの削減」
フジクラの技術がデータセンターの現場でどのように効果を発揮しているのか。それを理解するには、データセンターの物理的な構造を知る必要がある。
大規模データセンターの敷地内には、地下に管路と呼ばれるパイプが埋設されている。光ケーブルはこの管路を通して建物間やサーバ間をつなぐ。管路の太さには物理的な制限があり、新たに敷設するなら道路を掘り起こす土木工事が必要になる。
1万3824芯のSWR/WTCケーブル1本で済む配線を、従来の1000芯ケーブルで代替すれば10本以上必要だ。工事費は10倍に膨らむ。既存の管路にすでに他のケーブルが入っていれば、土木工事からやり直しになる。SWR/WTCケーブルの単価は従来品より高いが、トータルではコスト削減につながる。
Google、Amazon、Microsoftなど、ハイパースケーラーと呼ばれる米国の巨大クラウド事業者がフジクラに求めているのは、このトータルコストの削減だ。コンパクトな配線による電力消費の低減と、データセンターの建設からサービス開始までの時間短縮。配線工事が短期間で完了すれば、その分早期に収益化できる。
フジクラの強みはケーブルだけにとどまらない。実際にデータセンターに導入する際に必要な、光ファイバー同士をつなぐための「コネクター」や「融着接続機」、施工の提案まで1社で提供でき、これらはいずれも世界トップクラスのシェアだ。さらに、配線工事にも事業領域を広げている。
「光ファイバー1本1本は、コモディティ化している」と岡田社長は認める。しかし、1万芯超を1本のケーブルに加工できる企業は世界でも限られる。光ファイバーをいかにケーブルとして束ね、つなぎ、敷設するか。トータルソリューションとしてフジクラは大きな優位性を誇っており、他社が容易には模倣できない参入障壁になっている。
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