巨大テックのAI開発を停滞させない レゾナックが証明した「後工程」という日本の武器:AI革命、日本企業の勝ち筋(1/3 ページ)
生成AIの普及により、AI半導体の需要が急拡大している。その競争力を左右するのはチップそのものだけではない。複雑化する構造を支える「後工程」材料の重要性が高まっている。こうした中、レゾナック・ホールディングスは共創を軸にした開発体制を構築し、存在感を高めている。その戦略の背景と、日本企業の勝機を探る。
AI半導体の生産を支えているのは、チップを製造する半導体メーカーだけではない。パッケージング(組み立て)に必要な半導体材料を提供する企業も、AI革命の重要なプレーヤーとなっている。この産業構造の変化の中で、存在感を高めているのが化学メーカーのレゾナック・ホールディングスだ。
同社ではAI半導体の需要拡大を背景に、半導体・電子材料事業が急速に成長。2025年には同事業のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)マージンが前期比で30.2%に達するなど、高い収益性を記録した。
AIブームを追い風に変えた同社の取り組みから、これからの日本企業がグローバル市場で優位性を確保するための条件を探る。
なぜ、レゾナックの材料が求められるのか
AI半導体は従来の半導体と比べて部品点数が増え、構造が複雑になっている。そのため、部品を何層にも重ねて接続したり、発生する熱を逃がしながら安定的に動作させたりといった工夫が必要になる。こうした構造を支える上で、同社の半導体材料が重要な役割を担っている。
同社の製品で特に注目されているのが、NCF(絶縁接着フィルム)、TIM(放熱シート)、MCL(銅張積層板)といったAI半導体の後工程で使用される材料だ。この分野で長年ノウハウを蓄積してきた同社に、多くの企業から連携の打診が寄せられているという。
なぜ、同社に需要が集まるのか。レゾナック・ホールディングス取締役であり最高戦略責任者(CSO)の真岡朋光氏は「一言で表すのであれば“半導体の作り方を知っている”ことに当社の特徴があります」と話す。
同社は2019年、神奈川県川崎市に「パッケージングソリューションセンター」を開設。ここでは先進装置を使い、半導体のパッケージング工程を実際の製造に近い形で再現しながら、試作や評価ができる。これにより同社は、単なる材料供給にとどまらず、半導体メーカーに対して材料開発から評価までを一体で提案している。
「材料だけ作って渡しても、それが本当に使えるかは分からない。ピザ職人にチーズだけ渡して『おいしいピザを作って』と言うようなものです。本当においしいピザになるのかを確認した上で提供できることが強みとなっています」
また、パッケージングソリューションセンターは、企業同士の「共創」による次世代半導体パッケージの早期実現を目指して設立した施設でもある。
半導体は各企業の材料を組み合わせて完成する製品だ。半導体材料メーカー単独では技術検証に膨大な時間がかかるという課題があった。この課題を解決するため、同センターにおいてコンソーシアム「JOINT」を設立。国内の材料・装置メーカーなどを巻き込んだエコシステムを構築し、よりスピード感のある開発・評価体制を構築してきた。
その後、生成AIの普及によってAI半導体の構造はさらに複雑化し、パッケージング技術の難度も一段と高まっている。
こうした変化に対応するため、同社は2025年8月、JOINTを発展させた新たな枠組み「JOINT3」を立ち上げた。JOINT3には海外企業も含めた27社が参画している。
「AI半導体を支えるパッケージングの技術的課題は、1社だけでは解決できない問題になっている」と真岡CSO。だからこそ、企業が連携するエコシステムの重要性は今後ますます高まっていくという。
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