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日本法人CEOが語る“スタバ流”人材育成術 顧客の心を動かす接客と効率化を両立できるワケ

顧客体験価値の向上につながる取り組みを実践するスターバックスは、顧客の心を動かす接客と効率化をどのように両立させているのだろうか。

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 スターバックス コーヒー ジャパン(以下、スターバックス)は、顧客の心を動かす接客マインドを「ロマンス」と呼び、人材育成の柱にしている。顧客体験価値やロイヤルティの向上につながる取り組みを、これまで累計約30万人の従業員が実践してきた。

 「経営の世界では『効率を上げるためには、人間的なこだわりは負担やコストになりかねない』という考え方があります。ロマンスを追求し過ぎれば効率が落ちやすい。私たちは葛藤しながら別の答えを出しました。『1杯のコーヒーに込める情熱』と『2100店舗を動かすオペレーション』は両立させられる、と」――スターバックスCEOの森井久恵氏は、4月2日のメディアカンファレンスでこう語った。

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スターバックスの森井久恵CEO(アイティメディア撮影、以下同)

“スタバ流”人材育成 「接客」と「効率性」をどう両立させている?

 同社はロマンスを追求する上で、従業員の技術や接客術などを重視している。アルバイトを含む全ての従業員に数十時間の研修を提供して、業務に必要な知識や技術の習得を後押ししているという。

 店舗に立つスタッフであるバリスタの資格取得といった成長をサポートするとともに、数カ月ごとに店長と従業員が1対1の面談をして目標設定やフィードバックを実施。上司からの評価だけでなく、従業員が称賛を送り合う「グリーンエプロンカード」の文化も根付いており、同カードは年間20万枚も使われているという。森井氏は「リテール業界では異例ともいえる深さで人に投資しています」と強調した。

 「人は、自らの成長を実感するとやりがいにつながります。成長への情熱を育むことで、一人一人が期待に応えようと自ら考えて行動する。それこそが、目の前のお客さまの期待を超えようとするスターバックスのロマンスの源泉です」(森井氏)

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バリスタの技術を披露するスターバックスの下出伸喜氏。世界各地の店舗を代表するバリスタが腕を競う「スターバックス グローバルバリスタチャンピオンシップ 2025」で優勝した

テクノロジー活用で「接客に集中できる時間」を作りだす

 この人材育成を支えているのが、同社が進めている徹底的なテクノロジー活用だ。森井氏は「ロマンスを重視することは、効率性を軽視するという意味ではありません。むしろ逆です」と話した。テクノロジーを活用して業務を効率化させる仕組みを作ることで、人材の育成や顧客体験価値の向上につながる施策を展開している。

 とりわけ効率化に寄与している要素の一つが、スマートフォンによる「モバイルオーダー&ペイ」の拡大だ。モバイルオーダーを提供している会員数は1900万人に迫る(2026年4月時点)。専用アプリの他、WebサイトやLINEミニアプリから注文可能だ。利便性を高めて顧客体験価値を向上させるとともに、注文作業を円滑にして接客やドリンク作成に割く時間を増やす狙いがあるとみられる。

 この他、新しいPOSシステムや最新のコーヒー抽出機も導入する。

 「仕組みによって基本的な品質を担保するからこそ、従業員はお客さまとの時間に集中できる。テクノロジーの役割は人を鍛えることではなく、人がロマンスに集中できる環境を増やすための投資だと見ています」(森井氏)

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新たなテクノロジーを取り入れてロマンスを支える(出典:スターバックス 森井氏の発表資料)

AI時代、SNS時代こそスターバックスの価値が高まる

 スターバックスは国内1号店の誕生から30年に渡って、人的資本の価値を最大限に引き出し、発展してきた。森井氏は、次の30年に向けて意欲をにじませた。

 「30年たった今、社会は大きく変わりました。AIが日常の当たり前になり、あらゆることの自動化が進むほど、生身の人間同士の接点は少なくなっているように感じます。SNSで誰とでも、いつでも瞬時につながれるのに、孤独が社会問題になっています。人のぬくもりがあるサードプレース(注:家でも職場でもないスターバックスの店舗)の価値は30年前よりも今、今よりも未来の方がより大切になると考えています」(森井氏)

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30周年を記念した「THE フラペチーノ of フルーツ‐オン‐トップ‐ヨーグルト with クラッシュ ナッツ」。カップに30周年のロゴがあしらわれている

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