「タクシー×きくらげ栽培」 売上6割減から逆転、異色の掛け算で生まれた新収益(5/5 ページ)
コロナ禍で売り上げが6割まで落ち込んだタクシー会社が新たに見いだした活路が「きくらげ栽培」ビジネスだった。本業の10倍の利益率を今では確立しているという。
参入しやすいが、続けるのは難しい
きくらげ事業の文脈でメディアに露出するたびに、日栄交通には全国から問い合わせが届くようになった。
「空き家を活用したい」「過疎地の特産品にしたい」「廃校でできないか」など、その数は3〜4年で累計200件を超えるという。また「テレビを見て自分もやってみたが、うまくいかない」という相談も届いた。
「相談を受け付けているわけではありませんが、話を聞くと、みなさんやっぱり栽培はできるんですよ。問題は売れないこと」
きくらげ栽培は農地不要で参入障壁が低い分、販路もブランドも持たずに始めると、中国産の安価な乾燥品と同じ土俵に立たされる。また、生きくらげを売るには鮮度を保てる近隣での販売先の確保が必要と、清水氏は説明する。
施設栽培の光熱費や設備費は露地栽培より高く、ブランディングによって価格転嫁できないと利益が出ない構造だ。
「当社がうまく行ったのは、タクシー×きくらげという意外性があったからだと思います。車両は広告媒体になり、地域での信頼が販路になる。たまたま良い条件が整っていたんです」と分析する。
現在、清水氏は2つの計画を進めている。1つは菌床工場の内製化で、現在1キロ当たり約450円かかる菌床コストを削減すべく、埼玉県加須市の農地付き一軒家を借り受け、月1万〜1.2万床の供給が可能な菌床工場への転用を進めている。内製化が実現すれば利益率の大幅改善が見込める。
もう1つは全国でのパートナー網の構築だ。「あの日のはごたえ」ブランドと栽培ノウハウを提供する代わりに、菌床やパッケージをまとめて購入してもらうモデルを設計している。
「コンサル費用を乗せても薄利構造から抜け出すのは難しい。菌床を仕入れること、買ってもらうことを両立させれば、お互いにメリットがあります」と清水氏。
売り上げ比率で見ればタクシー事業が現在も全体の約95%を占めるが、利益率ではきくらげ事業がタクシーの約10倍に上る。「このまま両方が伸びていけば、利益ベースでいずれ逆転する可能性があります」と清水氏は話す。
きくらげ栽培に取り組んだことで、農業従事者とのつながりも生まれた。落花生の露地栽培にも取り組み始めたという。しぶしぶ引き継いだ家業で清水氏は、タクシーときくらげを並走させながら次の手を考えている。
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