AIがシステムを操作する時代、SaaSはどう変わる? freeeが示すMCPの課題と可能性(3/5 ページ)
AIエージェントがSaaSのサービスを操作する時代に入った。SaaS各社は、今後どのような対応をしていく必要があるのか?
「画面を開かない業務」はもう始まっている
freeeは2026年3月にハッカソンを立ち上げた。回を重ねるごとに、参加対象を社外のユーザー企業や税理士にも広げ、3月末時点で5回を数える。参加者はエンジニアに限らない。プロジェクトマネジャー(PM)、営業、アライアンス担当、バックオフィス部門、役員まで職種を問わず集まった。
このハッカソンで生まれた事例に共通するのは、freeeの管理画面を経由しないことだ。実際、freee会計で入金期日を過ぎた取引先を検知し、取引先情報を取得し、Gmailで督促メールの下書きを作成する。この一連の流れがClaude上の1つの指示で完結した。
従来はfreeeの画面で未入金を確認し、Excelで取引先を整理し、メールソフトで文面を書いていた。青山氏は「MCPによって、AIエージェントの実装コストが大幅に下がった」と評価する。
社外への波及も速い。顧問先から届くレシートの束を手作業で転記していた税理士が、AI経由でfreeeにデータを取り込めるようになった。「これにより、職員1人が担当できる顧問先は10社だったが、30社になったという例もある」と青山氏は語る。AIエージェントを使って作業を自動で実行した上で、異常値だけを人間が確認する運用に切り替えた税理士もいるという。
業種特化の事例も生まれた。都内の建設会社で経理を担当する参加者は、freeeのデータからプロジェクトごとの収支・粗利・請求書ステータスを一覧化するダッシュボードをAIで構築した。「経営陣が数字に強くないため、freeeの画面では頭に入ってこない」という課題を、「AIによって、見たいデータを見たい形で出す」ことで解決した。人件費のExcel管理もアップロードして統合する仕組みを作っている。
freee人事労務のエンジニアは、勤怠チェックの独自ルールをAIに教えるスキルを数時間で開発した。深夜残業の申請漏れ、在宅勤務タグとメモの整合性チェックなど、会社ごとに異なるルールを自然言語で定義し、AIが自動で検出する。プロダクトとして正式に機能開発するには優先順位の壁があるが、現場のエンジニアがMCPを使って形にすることが可能になった。
ハッカソンが示したのは作り手の広がりだ。第1回のハッカソンで登壇したあるPMは、「コードは一行も書いていない。PMだろうがマーケティングだろうが、誰でも作れる」と語った。MCPとスキルがAPIの複雑さを和らげ、自然言語で意図を伝えれば、誰でも開発することができる。開発の敷居が、明らかに低くなったのである。
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