AIがシステムを操作する時代、SaaSはどう変わる? freeeが示すMCPの課題と可能性(5/5 ページ)
AIエージェントがSaaSのサービスを操作する時代に入った。SaaS各社は、今後どのような対応をしていく必要があるのか?
MCPが突きつけるSaaSビジネスへの問い
ここまでは、freeeにとって追い風の話だが、MCPはfreee自身にも問いを突きつけている。
UI(ユーザーインターフェース)は議論のうちの一つだ。freeeはこれまで「会計に不慣れな方でも使いやすい画面」を売りにしてきた。それが「AIにとって使いやすいfreee」へ軸足を移しつつある。入力も出力もAI経由が当たり前になれば、UIは「操作する場所」から「確認する場所」に変わる。
ただし、UIがなくなるわけではない。中島氏は「ミスをチェックするUI、データの構造を正しく理解するためのUIは残さなければならない」と話す。ハッカソンの参加者がfreeeを使いこなせたのも、UIを通じて会計や労務の概念をあらかじめ理解していたからだ。完全なヘッドレス(画面を持たず、APIだけでサービスを提供する形態)ではなく、UIの役割が変わるというのが社内の認識である。
また、課金モデルへの影響も避けられない。従来のSaaSは社員数に応じた課金が主流だった。しかし、AIエージェントが人間に代わって操作を行うようになれば、「何人が使うか」を基準にした課金の枠組み自体が成り立ちにくくなる。「AIが使いやすいものにできれば、提供した価値に対して料金をいただくことは可能だ」と青山氏は語るが、具体的な課金体系の移行は今後の課題だ。
プロダクト開発の優先順位も揺れている。「freeeの中にあるべきものと、外で何とかなるもの。その仕分けの議論が始まっている」と中島氏は明かす。全ユーザー共通の機能はプロダクトに、会社ごとの独自ルールはAIとMCPでユーザー自身が構築する。この役割分担が見え始め、APIの整備によりかじを切る意思決定が下されたという。
そもそも、「AIに選ばれるソフトウェア」の条件は何なのか。青山氏はAPIの広さを第一に挙げ、中島氏は「監査ログがきちんと取れ、間違った際に戻せること」と述べた。ハッカソンの現場では「AI用の従業員IDを作って操作を識別する」というアイデアも出ている。APIを開放するだけでは足りない。AIの操作を記録し、誤りを巻き戻せる信頼の基盤が、次の競争領域になる。
ただし、APIを開放するということは、SaaSに貯めたデータをAIが簡単に抜き出せる時代になったということでもある。利便性とデータ統制のバランスをどう設計するか。freeeだけでなく、MCP対応を進める全てのSaaS企業が直面する問いだ。
「変化は速い。でも、絶対に速く走れるやつが一番強い」という青山氏の言葉は、freee自身にも向けられている。
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