「半年で2000時間削減」 MIXIのAI活用、非エンジニアの“重い腰”を上げた「発想の転換」とは?(2/2 ページ)
MIXIの「はたらく環境推進本部 ビジネスサポート室」では、AI活用を進めた結果、6カ月で累積2000時間の削減を実現した。組織にエンジニアは一人もおらず、AIやDXに詳しいメンバーもいなかったため、最初は「AIに自分の仕事を奪われたくない」「AIがなくても回っているのに、なぜ使う必要があるのか分からない」といった声も上がったという。MIXI ビジネスサポート室はこの壁をどう乗り越えたのか。
効果が大きかった2つの施策は?
では、具体的にどのような業務にAIを活用して、それぞれどれほどの時間を削減したのだろうか。
例えば、検収書のPDF作成時間は、3分から30秒に短縮した。ゲームアプリのボイス収録で使用する台本作成にかかる時間は、10分から30秒になった。事業の振り返り資料の作成は、32時間から13時間にまで短くなった。
毎回20分、月に20回程度発生していたヒアリング議事録のレポート作成は、全てAIで実行できるようになった。こうした事例で利用したAIツールの割合は、ChatGPT:47%、Gemini:28%、NotebookLM:15%、Vertex AI:10%となった。
さらに大きな効果をもたらしたAI活用事例として、案件情報管理システム「square2」と複数同時翻訳ツールがある。いずれも非エンジニアがAIと対話しながら作ったものである。
案件情報管理システム「square2」は、ビジネスサポート室内で対応している全ての案件情報を管理するためのツールだ。
ビジネスサポート室は専門領域に応じて6つのグループに分かれており、このツールがない頃は「他のグループがどんな動きをしているのか」「誰が何に対応しているのか」といったことが互いに見えづらかった。また、案件情報が点在し「支援や相談の入口が属人化しやすい」という課題もあった。
「square2ができたことで他グループの動きが見えるようになり、先回りしてアクションを検討・実行できるようになった。加えて、週次/月次レポートの作成など、既存の定型業務をAIで自動化できるようにもなり、大幅な時間削減につながっている」と語るのは、ビジネスサポート室 インフォメーションハブグループの蛭川幸太郎氏だ。
ちなみに、このsquare2は同室の非エンジニアが、ほぼ1人でAIと対話しながら構築していった。ロジック設計から実装、エラー対応まで、エンジニアの助けを求めることなく、通常業務と並行しながら開発を進めたという。
「square2は、自分たちがやりたいことを過不足なく詰め込んだオーダーメイドのシステム。かつてこのようなシステムを作るにはエンジニアやシステム部門の工数を使うか、コストをかけて外部委託するしかなかったが、いまは自分たちで実際に使いながら、改善し続けられる」と真田氏は手応えを語った。
ヒトにしかできない“コミュニケーション”を武器にするために
ビジネスサポート室には多言語翻訳を担うグループもあるが、少人数で対応するため、メンバーの休暇といったイレギュラーに弱く、不在時の緊急対応が難しい課題があった。
そこでAIを活用しながらGoogleスプレッドシートをベースとした複数同時翻訳ツールを開発。英語・韓国語・スペイン語など7言語に対応しており、Googleスプレッドシートのセルに翻訳したいテキストを入れて「翻訳」ボタンを押すだけで、わずか30秒ほどで7言語への同時翻訳が完了する。既存の翻訳ツールとも連携しながら、過去事例や用語集を自動引用する仕組みにしたことで、一定の翻訳品質を担保している。
このようなAI活用によって創出された2000時間は、どこに充てられているのか。その主な再投資先は「AI活用ワークショップ」と「ヒューマンスキル研修」の2つである。
AI活用ワークショップは、AIに関する知識の底上げに向けて、有志メンバーが立ち上げた活用事例共有と実践の場だ。この研修内容や資料作成もAIと相談しながら進めたという。
ヒューマンスキル研修は、人事と連携したオリジナルのコミュニケーションスキル研修だ。人事担当者や外部専門家による研修に加え、室長による実践的なコミュニケーションノウハウを共有している。
こうした取り組みを経て、社内外とのコミュニケーションに十分な時間を確保して、関係強化につなげることができるようになった。また、異動のような組織体制の変化に対し、スピード感を持って適応できるようになったグループもあったという。
「AIは“人と向き合う時間を増やすパートナー”」だと語る真田氏。なぜAIで効率化を図るのか、そして自分たちはどこを目指すのか。この合意形成こそがAI活用を浸透させる成功の要であり、メンバーが納得感をもって取り組む重要性を説いた。
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