米ブラックロック、コメダHDを「買い」と見たワケ AI全盛に逆行する真意とは:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)
資産運用大手の米ブラックロックが、コメダHDの株式の大量保有に踏み切った。AIブームの中、なぜ今「喫茶店」に投資するのか?
日本の「食」が持つ海外展開の可能性
4月8日に発表されたコメダHDの2026年2月期の本決算は、この構造の強さを裏付けるものだった。売上収益は572億2500万円(前期比21.6%増)、営業利益は94億2400万円(同6.8%増)、純利益は64億6100万円(同11.1%増)。純利益は2期連続で過去最高を更新し、売り上げは6期連続の増収となる見込みだ。
売り上げの急伸には、2025年3月にシンガポールのカフェ・タイ料理チェーン「POON」の株式の70%を取得した効果が含まれている。日本国内で見えてきた出店余地の天井を、海外で突破しようとしているのだ。
これもブラックロックが「今」コメダHDに投資した理由だ。日本の「食」が持つ海外展開の潜在力を評価しているのである。
寿司、ラーメン、焼肉などの日本発チェーンが海外で展開されることは珍しくなくなった。その根底には、素材へのこだわり、品質管理のきめ細かさ、サービスの水準の高さといった「日本品質」への評価がある。
コメダHDは台湾や上海ですでに出店実績を持ち、2023年にはインドネシアにも進出。中期経営計画では海外80店舗を目標に掲げている。
今回のPOONの買収は、単なる店舗数の積み増しではない。シンガポールという東南アジアのハブとも言える場所で、既存の30店舗のインフラと、現地オペレーションのノウハウを同時に手に入れる狙いもある。また、POONを足がかりに、マレーシア、タイ、ベトナムへと「食品製造プラットフォーム」を横展開する絵も描ける。
ブラックロックが大量保有報告書を提出したのも、POONの統合進捗が見える買収完了からちょうど1年のタイミングだ。これは偶然にしてはタイミングが良すぎる。
もちろんリスクはある。コメダHDが採用する定額ロイヤルティーモデルはFC加盟店に優しい反面、本部の取り分が売り上げに連動しにくい面もある。そのため、商品研究に投じる開発費が、スターバックスなどの巨大企業よりも少なくなってしまい、商品力で劣後する可能性もある。
ただ、そうしたリスクがある中でも、世界最大の資産運用会社がコメダHDに賭けたという事実は大きい。今回提出された大量保有報告書の内訳を分解すると、そこには上場投資信託(ETF)の機械的な買い以上の「意思」が読み取れる。AIが世界を変える時代だからこそ、AIに壊されない「衣食住」の実需に、資金が向かっているのかもしれない。
「ミクロがマクロを動かす」を掲げるブラックロックがコメダHD株の大量保有に踏み切ったのは、マクロ経済が揺らぐ時代における当然の流れともいえる。コメダHDのミクロな競争優位性が、確実なリターンを生むためのマクロ投資戦略となるのか。今後の動向を、引き続き注視していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体
今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。これはなぜだろうか。決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、株式市場の評価とは乖離した実態が浮き彫りになる。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
「あの時気付いていれば……」 モンスター社員を面接で見抜く、たった一つの重要質問
彼らは「嘘をついている」わけではない。ゆがんだレンズを通して世界を見ているため、彼らにとって「正しいこと=周囲が悪であること」という構図は、疑いようのない真実として映っているのだ。
「返信不要」と深夜に部下へチャット……これってハラスメントなんですか?
職場で起こりがちなトラブルを基に、ハラスメント問題に詳しい佐藤みのり弁護士が詳しく解説します。
部下が「もう、仕事が終わったので」と定時より前に帰ろうとします 引き止めたらパワハラに当たりますか?
職場で起こりがちなトラブルを基に、ハラスメント問題に詳しい佐藤みのり弁護士が詳しく解説します。
