Apple新CEOが継いだ「ジョブズの言葉」 その経営哲学は“ピクサー買収時の懸念”から生まれた
米Appleの次期CEOが「スティーブ・ジョブズのリーダーシップ哲学」を受け継いだ。ディズニーによるピクサー買収時に生まれた経営哲学とは。
米Appleは、次期CEO(最高経営責任者)としてジョン・ターナス(John Ternus)氏を起用した。ティム・クック(Tim Cook)氏から2026年秋にバトンを受け継ぐ人物である。クック氏は、自身がCEOに就任した際にスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏から受けた助言と同じ内容を後継者にも伝えるという。
長年社内でキャリアを積んできたジョン・ターナス氏が、2026年秋にティム・クック氏の後任として経営のかじ取りを担う。同氏は、創業者スティーブ・ジョブズの下で世界的象徴へと成長した、時価総額4兆ドルの企業を引き継ぐことになる。
Apple次期CEOが受け取った“ジョブズの言葉”とは
クック氏は、ジョブズ氏から授かった助言「自分ならどうするかを問うな。ただ正しいことをせよ」をそのままターナス氏に伝える考えだ。
「私もおそらく同じことを言うだろう。他人の思考に自分を当てはめようとすると、思考停止に陥りかねないからだ」――クック氏は、後継発表の数週間前にThe Wall Street Journal紙に語った。
ターナス氏は現在、Appleのハードウェアエンジニアリング担当のシニアバイスプレジデントを務めており、9月1日にCEOへ就任する。
一方、クック氏は15年にわたるCEOとしての任期を終え、取締役会のエグゼクティブチェアマンへ移行する。クック氏が2011年にCEOに就任した当時、テクノロジー業界は現在とは大きく異なり「AirPods」もまだ市場に登場していなかった。
それでもクック氏は、ジョブズ氏のリーダーシップ哲学から一度もぶれることはなかった。そして今、その知見を次のAppleの顔となる人物に引き継ぐ。
「自分自身であれ、そして企業の価値観という確固たる北極星を持ち続けよ」とクック氏は続ける。「価値観を正しく保ち、北極星を見失わなければ、多少進路がそれても、最終的には正しい道に戻れる。私は常にそれが真実だと実感してきた」(クック氏)
Fortune誌は、Appleにコメントを求めている。
ディズニー時代、ジョブズ氏が見いだした哲学
Appleは、今後もジョブズ氏の遺産と切り離せない存在であり続けるが、ジョブズ氏自身はそれが他者の独自の道を切り開く妨げになることを望まなかった。死去の数カ月前、彼はクック氏に助言を与え、それが今、ターナス氏へと受け継がれている。
「ジョブズの助言は『自分ならどうするかを問うな。ただ正しいことをせよ』というものだった」とクック氏はCBSニュースの番組「Sunday Morning」で3月に語った。
この教訓は、ジョブズ氏がエンターテインメント大手の米The Walt Disney Company(Disney)での経験から学んだものである。ジョブズ氏は、アニメーション制作スタジオのPixar Animation Studios(Pixar)の創設に関わった一人でもあり、1986年に映画制作会社「Lucasfilm」からPixarを買収した。
その後、Disneyが2006年にPixarを買収し、ジョブズ氏はその過程で、ある懸念すべき傾向に気付いた。
「ジョブズ氏は、Disneyが『ウォルト(Walt Disney)ならどうするか』を議論し続けることで思考停止に陥る様子を目の当たりにした」とクック氏は説明する。「彼はAppleで同じことが起きるのを望まなかった」
それから15年、退任するクック氏はその教訓を忘れることはなかった。Appleは、1兆ドル規模の成功へと飛躍した。今度はターナス氏が、この哲学を体現しながら企業の次の時代を切り開く責任を担う。
「私はその言葉を決して忘れない。それは『スティーブならどうするか』という問いから私を解放してくれた、大きな贈り物だった」とクック氏は続ける。「私はただ目の前の仕事に集中し『自分自身の最良の姿になろう』と考えた」(クック氏)
AirPods、iPad、iPhoneを統括した次期CEOの素顔
数カ月にわたる臆測の末、Appleは後継者を社内から選んだ。ターナス氏は職業人生のほぼ全てをAppleで過ごしてきた。
同氏の「LinkedIn」によると、米Virtual Research Systemsで短期間エンジニアとして勤務した後、2001年にAppleの製品設計チームに加わった。当時は革新的な新製品が次々と登場しようとしていた転換期であった。2013年にはハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントに昇進し、その後シニア職に就いて2021年に経営陣入りを果たした。
約25年にわたり、機械工学の専門家であるターナス氏は、AirPods、全世代のiPad、最新のiPhoneなど、Appleの幅広い製品群のハードウェアエンジニアリングを統括してきた。
だが評価されたのは技術力だけではない。クック氏は、ターナス氏について「エンジニアの思考、イノベーターの魂、そして誠実と名誉をもって導く心を持つ人物だ」と述べている。
「ターナスは先見性を備えた人物であり、25年にわたる貢献は数えきれない。将来に向けてAppleを率いるのに最適な人物であることは疑いない」とクック氏は声明で語った。
CEO就任の発表を受け、ターナス氏はジョブズ氏の元で働き、クック氏をメンターとしてきたことを幸運に思うと述べた。
今後については、会社が達成し得ることに「大きな楽観」を抱いており、歴代のAppleリーダーが築いた原則に忠実であり続けると強調した。
「Appleの使命を引き継ぐ機会を与えられたことに深く感謝している」とターナスは声明で述べた。「この役割を担うことを光栄に思うとともに、この特別な企業を半世紀にわたり形作ってきた価値観とビジョンをもってリーダーシップを発揮することを約束する」(ターナス氏)
(エマ・バーリー記者による報道/Fortune、Reuters Connect経由)
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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