タクシー運転手が月収100万円? “勝ち組”報道の裏にある3つの不安:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
手取り100万円のプレーヤーが登場するなど、高収入化が話題となっているタクシー運転手。今後タクシー運転手になれば安泰かというと、そうではなく……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「えっ、そんなにもうかるならオレも転職しようかな。運転には自信あるし、このまま今の会社にいてもAIに仕事を取られそうだし」
そんなふうに前のめりになっている方も多いのではないか。最近、タクシードライバーの収入が上がっていて、「日本版ブルーカラービリオネア」などともてはやすニュースが増えているからだ。
ブルーカラービリオネアとは、米国から入ってきた概念だ。直訳すると「肉体労働で億万長者になった人」ということだが、もちろん、米国でもそんな極端な現象が現実に起きているわけではない。
米国では近年、AIの普及でホワイトカラーの仕事が奪われる不安が高まっている一方で、クーラーや冷蔵庫を設置する電気設備工で人手不足が起き、賃金が高騰している。そのホワイトカラーとブルーカラーの需要の逆転現象を、こうした言葉で揶揄(やゆ)しているというわけだ。
ご存じのように、わが国は米国で起きた現象が少し遅れて上陸することが多い。“ブルーカラービリオネアブーム”も同様で、2025年あたりからAIに仕事を奪われず、むしろ価値が上がっていく職業はあれだ、これだと話題に上るようになり、その代表例として、タクシードライバーがもてはやされるようになったのである。
- 「タクシー運転手は収入4割増『ブルーカラービリオネア』日本では?(日本経済新聞 2026年1月10日)
- 「月収100万超え続出! 急増する『ブルーカラー・ビリオネア』タクシー運転手がバブルに沸くワケ」(FRIDAYデジタル 2026年4月21日)
ただ、こうした話を真に受けて本気で転職しようという人は、ちょっと冷静になったほうがいいかもしれない。日本のタクシードライバーの年収が上がっているのは、AIがどうこうという話でもなく、単に東京都内など限られた地域で、移動需要に対してタクシーの供給が少ないというだけのことだ。
しかも、そういう「勝ち組ドライバー」の安泰が続くわけでもない。ブルーカラービリオネアの地位を揺るがす3つの不安要素があるからだ。こうした要素がある限り、実現はなかなか難しいだろう。
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