タクシー運転手が月収100万円? “勝ち組”報道の裏にある3つの不安:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
手取り100万円のプレーヤーが登場するなど、高収入化が話題となっているタクシー運転手。今後タクシー運転手になれば安泰かというと、そうではなく……。
手取り100万は本当か
どういうことか、順を追って説明しよう。まず、これらの「タクシードライバーがもうかる」報道を読んでいただければ分かると思うが、手取り100万など景気のいい話は「東京に限られる」とされている。この手の「もうかってウハウハです」的なニュースは地方の現実を無視したものが多いのだ。
なぜ東京はそんなに景気がいいのか。配車アプリの普及など、さまざまな理由が挙げられるが、最も大きいのは、日本人以外の利用者が大幅に増えたことに尽きる。
東京都によれば、2019年に東京都を訪れた外国人旅行者数は約1518万人だったが、2024年には約2479万人まで増加している。では、都内移動で重要な役割を担う東京のタクシーは、この5年間でどう推移したのか見ていこう。
公益財団法人東京タクシーセンターの統計で、営業している法人タクシー運転手数の目安となる「運転者証交付数」を見ると、2019年度4月の5万9591人から、2024年度4月には5万1400人となり、8191人減少している。また、個人タクシーの数を示す「事業者乗務証交付数」を見ると、2019年度4月の1万1934人から、2024年度4月には9035人となり、2899人減少している。
つまり、外国人観光客は5年の間に約961万人と、東京23区の人口に匹敵する規模が増えたにもかかわらず、東京のタクシー運転手は1万1090人も減っているのだ。
需要は爆増しているのに、供給が減少していけば、価格がつり上がっていくのは経済の大原則である。都内のタクシーがバブルに沸いているのは、高齢化やコロナ禍でドライバーが減少したところに、外国人観光客が大挙して押し寄せているに過ぎない。とどのつまり、安倍・菅政権から進めてきた政府の観光立国政策による「インバウンド特需」だ。
そんな分かりやすい現象を、市場も産業構造もまったく異なる米国で生まれた「ブルーカラービリオネア」という概念をわざわざ引っ張り出して騒ぎ立てる。「バズるニュース」をつくりたい気持ちは分かるが、さすがにこれはちょっとやりすぎだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「残クレアルファード」はこうして広まった マイルドヤンキーとトヨタの“最適解”
トヨタの高級ミニバン、アルファードが人気を維持している。当初から突出して人気だったのではなく、3代目モデルのインパクトのある顔つきでヒットした。さらに、残価設定クレジットによって地方の若者にも手が届くようになり、長期的な人気につながっている。
やっぱり、すぐ辞める新人は世の中をナメているのか 「倍速退社」の背景にある企業の病
4月の入社後、すぐに退職代行サービスを利用して会社を辞める若者がいる。「そんな人は、ロクな大人にならない」と言いたくもなるだろうが、原因は若者だけにあるわけではなく……。
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
庶民の味方である立ち食いそばに、外国人観光客が押し寄せる現象が起きている。外国人観光客お断りを示す店舗もあるが、「そば」が本当の意味でも世界に愛される日本食になるためにできることとは。
「JALとANA」どこで違いが生まれたのか? コロナ禍を乗り越えた空の現在地
インバウンド需要が旺盛で、日本の観光業界が盛り上がりを見せています。では、航空会社の業績はどうなっているのでしょうか。JALとANAの決算をベースに分析したところ……。

