「11億円を自ら振り込んだ」エンジニア集団の悲劇 はてなを襲った巨額詐欺、IT企業の意外な盲点(2/4 ページ)
東証グロース上場のはてなが発表したニュースは、IT業界のみならず日本の経営層に激震を走らせた。悪意ある第三者からの「虚偽の送金指示」に従い、最大約11億円という巨額の資金を外部口座へ送金してしまったというのだ。これは「あの会社が特別に脇が甘かった話」ではない。どの業種の、どの規模の会社でも起こり得るリスクだ。
「IT企業に広報は不要」という致命的な誤解
危機管理広報の仕事をしていると「うちはIT会社だから、コミュニケーション戦略とかは関係ない」という言葉に、時々出合う。広報担当者がいないか、いても手薄なIT企業に多い反応だ。
しかし、それは大きな誤解だと考える。
確かに、「コミュニケーション戦略」と聞くと、メディア向けのプレスリリースや、記者会見での立ち居振る舞いを思い浮かべるかもしれない。しかし筆者が伝えたいのは、もっと広い意味でのコミュニケーションだ。あらゆるリスクが表面化したとき、企業は必ず「誰かに何かを伝える」という局面に立たされる。そのとき、どこに、何を、どの順番で、どんな言葉で伝えるか――それがコミュニケーション戦略の本質だ。
今回のはてなのケースで言えば、伝えるべき相手は一人ではない。株主・投資家、取引先、従業員、銀行をはじめとする金融機関、そして捜査機関3それぞれに対して、適切なタイミングで、適切な内容を届けなければならない。
実際、はてなの適時開示を読むと、発生から3日後の4月24日という開示のタイミング、個人情報漏えいの有無の明示、運転資金の流動性への言及など、一定の配慮は見受けられる。それでも株価はストップ安となった。情報開示の内容そのものより「この会社はこの先どうなるのか」「経営への影響はどの程度か」という問いに、市場が十分な答えを見いだせなかったからではないだろうか。
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