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プルデンシャル謝罪会見 「おしゃれすぎる」スーツが“地雷”だったワケ「31億円の不正」より叩かれた!?(1/2 ページ)

1月23日、プルデンシャル生命保険が謝罪会見を実施した。約31億円という巨額の不正事件そのものはもちろんだが、ネットを騒がせたのは、進行役を務めた男性司会者の服装だった。経営層が学ぶべき、謝罪の場における装いとは?

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著者紹介:大杉春子(おおすぎ・はるこ)

レイザー代表取締役/RCIJ代表理事

コミュニケーション戦略アドバイザーとしてPR戦略の企画から危機管理広報まで、企業・行政のブランド価値向上を包括的に支援。

日本において唯一、コミュニケーション戦略におけるリスク管理に特化したカリキュラムを展開する日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)を2020年に設立。

上場企業や防衛省での豊富な実績を持つ。

 体にぴたっと沿うタイトなシルエット。光沢のある生地。袖口で光るカフスボタン。

 「……おしゃれすぎる」

 1月23日、プルデンシャル生命保険が謝罪会見を実施した。約31億円という巨額の不正事件そのものはもちろんだが、ネットを騒がせたのは、進行役を務めた男性司会者の装いだった。

 彼は不正の当事者ではなく、理路整然と会見を仕切る進行の役割を担っていた。しかし、華やかなスーツにダブルカフスのシャツという装いは、浮ついた印象を与えてしまった。SNSでは「謝罪の場に相応しくない」という批判が連鎖し、企業側が伝えたかった再発防止策よりも、司会者の「おしゃれさ」が話題を独占するという、危機管理広報としては手痛い結果を招いた。

 そこで、あえて「服のプロ」(イメージコンサルタントやスタイリスト)ではない人たちに話を聞くことにした。当社が模擬記者会見のトレーニングを依頼する現役の社会部記者やそのOB・OG、そして長年仕事上の付き合いがある商業カメラマンたちだ。彼らがファインダー越しに、あるいは質問を投げかけながら感じ取っている「違和感」の正体を探るためだ。

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プルデンシャル生命保険の謝罪会見で、ネットを騒がせたのは……(写真提供:ゲッティイメージズ)

脳が勝手に「不誠実」と断定する、服装と認知バイアス

 筆者は過去に何度か謝罪会見のディレクションをしてきた。

 幸運なことに、これまで取引してきたクライアントには、奇抜な服を選ぶスポークスパーソンはいなかった。そのため、装いに対しては「紺か黒のスーツで」といった常識的で汎用的な指導に留めてきたのが実情だ。しかし、今回謝罪会見にいる現場の人たちの話を聞くうちに、私自身も「これは見落としていた、自分でもやってしまいそうだ」と感じる失敗のポイントがいくつも見つかった。

 服装やファッションの常識は、刻一刻と変化する。だからこそ、2026年2月現在の「視点」を共有したい。

 なぜ、たかが服一枚でそこまで叩かれるのか。そこには認知バイアスの強い影響がある。

 例えば、人は第一印象に強く引きずられる(初頭効果)。ある実験では、顔を見せない男性の写真を5秒だけ見せて印象を評価させたところ、オーダーメードの高級スーツを着た場合と、既製品の安価なスーツを着た場合とで、評価が大きく変わった。前者は「自信がある」「成功している」とされ、後者はそうでなかった。襟やボタンのわずかな違いで、知性・誠実さ・信頼感といった評価が上書きされるのだ。

 会見のように視線が集中する場では、この効果がより増幅される。高級感が過剰だと「偉そう」「反省していない」と見なされ、逆に身なりが乱れていれば「だらしない」「責任感がない」と批判の矛先になる。服装はメッセージそのものと解釈され、発言内容よりも強く印象を残すことすらある。

 さらに、色彩が与える影響も見逃せない。色彩心理学によれば、青は誠実・信頼・冷静さを想起させるため、謝罪の場に適しているとされる。一方で赤やオレンジ、ピンクといった華やかな色味は「主張が強い」「威圧的」といった印象につながりやすく、謝罪会見では避けられる傾向にある。実際に、明るいネクタイを着用して謝罪に臨んだ経営者が「反省の色が見えない」と批判された例もある。

 加えて、ハロー効果(顕著な特徴が全体評価に波及する)も見逃せない。例えば高級時計やブランドのカフスボタンといった目立つ装飾品があるだけで、「生活水準が高い=反省していない」という飛躍した印象が形成される。

 見た目に“ノイズ”があると、それが受け手の脳内で「態度の問題」や「組織の誠意」にすり替わってしまう。つまり、謝罪会見の服装とは、単なるマナーやドレスコードではなく、非言語的なメッセージ戦略の一部になる。

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オーダーメードの高級スーツを着た男性は、「自信がある」「高収入だ」と評価された(写真提供:ゲッティイメージズ)

細部のミスが引き起こす誤読 他の炎上事例に見る「見た目のトリガー」

 こうした理論を裏付けるように、服装という「非言語メッセージ」の選択を誤り、本題とは無関係なところで炎上を招いた事例が後を絶たない。

フジテレビ・港浩一社長:開いたままの「誠意のボタン」(2025年1月)

 トラブル問題の会見において、港浩一社長のスーツの前ボタンが留められていなかったことが批判の的となった。登壇して謝罪コメントを述べる際も上着は「フルオープン」の状態。視聴者からは「まずは服装から正せ」という怒りの声が上がり、身だしなみの乱れがそのまま「トップとしての誠意の欠如」と見なされる結果となった。

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左からフジテレビ遠藤龍之介副会長、港浩一社長、フジ・メディア・ホールディングス嘉納修治会長(肩書は全て当時。2025年1月撮影:河嶌太郎)

スノーボード國母和宏選手:服装と態度が共鳴した瞬間(2010年)

 2010年のバンクーバー五輪で、日本選手団の公式ウェアのズボンを「腰パン」で着崩した姿が批判を浴び、その後の会見で「チッ、うるせーな」という小声の毒づきと棒読みの謝罪。服装の乱れが態度の不遜さと結びつき、世論の猛反発を招いた典型例である。

 米国の政治史を見ても、服装の持つ政治的影響力は絶大だ。2014年、バラク・オバマ元大統領がシリアへの対応を説明する会見で「薄いベージュ(タン)のスーツ」を着用した際、保守派から「テロ対策を語る場にふさわしくない」と批判を浴びた。地方遊説では労働者との連帯を示すために、野暮ったいジーンズを履き、それが「庶民派を演出しすぎだ」と酷評されたこともある。

 ドナルド・トランプ大統領の「長い赤いネクタイ」も、自身の体格を大きく見せ、権威を誇示するための計算された戦術と言われている。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が常に着用するミリタリー風の装いは、「私は今も戦っている」という強烈なアイデンティティの表明だとする見方もある。服は言葉以上に饒舌だ。つまり謝罪の場で「何を着るか」という問いは、単なるマナーの問題ではなく、聴衆の脳内に潜む「認知バイアス」との戦いとも言える。

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