「日本は悠長すぎる」 スペック主義・韓国から見た日本企業の“不思議”とは?:【連載】ニッポンを「職場」に選んだら(3/3 ページ)
日本で働く海外出身の人々にとって、日本企業や日本社会はどのように映っているのだろうか。日本の隣国・韓国における就職事情や人々の就労観について押さえておきたい。
部下の教育はしない 退勤後「自分磨き」をする韓国の人々
──日本では若年層を中心に、猛烈に働いてお金を稼ぐよりも、自由時間やプライベートを重視したいと考える人が増えている印象を受けます。韓国はどうですか。
日本と同様、韓国でもコロナ禍をきっかけに、こうした変化はあります。
在宅勤務の広がりなど、働き方が変化する中で「労働時間が短くなった」と韓国の人たちが言っているのを耳にします。こうした価値観は、日本と韓国で大きな違いはないのではないでしょうか。稼ぎよりも自由な時間を重視するという傾向は強まっているのではないかと感じます。
もう一つ、韓国で特徴的だと感じるのが、職場で後輩に教えたり、教育したりといったカルチャーがあまりないことです。午後6時の定時になると、みんな仕事を切り上げてバーッと帰る。
帰って何をしているのかというと、そこから先の時間は自己研さんに充てている。これは当社の社員もそうでしたが、語学などの自分の勉強に取り組んでいる人が多かったです。
日本ではなかなかない感覚ですよね。こうしたところに刺激を受けたことは個人的にもありました。
──日本だと職場で周りの目を気にして、ズルズル残業をする、みたいなことも……。
韓国にも「ヌンチルル ポダ」(目線を見る/顔色をうかがう)という言葉があり、周囲の目を気にする、空気を読む、というところは日本と共通している部分があります。
韓国ドラマでは時折、同じオフィスの空間にいながら、直接話さずにPC上のカカオトークで話すといった光景が描かれますが、日本人にも理解できる感覚だと思います。
とはいえ、周りの目を気にすることよりも、スペック磨きのための自己研さんをしなければいけないという考えがあります。
日韓の「ハイブリッド型」が一番いい?
──日本と韓国、両者の企業文化を比較して見えてくることは?
現地に駐在する中で、双方の良さと課題を肌で感じてきました。
韓国に駐在する日系企業の社員の方々と話をすると、皆さんが口をそろえて言うのが「日本と韓国のハイブリッドが一番いいよね」ということです。
韓国で特に刺激を受けたのは、競争を前提とした圧倒的な「スピード感」です。とにかく意思決定が早く、決まった瞬間に実行に移す。私が滞在していたコロナ禍の時期でも、韓国政府の対策は「今日決めたら明日から実行する」といった即応性がありました。
日本が議論を重ねて翌月、翌々月から実施するのと比べ、そのスピードの差は歴然としています。ビジネスシーンでも、日本で1カ月かけて検討している間に、韓国ではすでにプロジェクトが動き出している。この瞬発力は非常に魅力的です。
一方で、日本の良さは物事を丁寧に進める姿勢にあります。周囲と協調し、情報を共有しながら着実にプロセスを積み上げる。何より、人を「育てる」という文化が根付いています。こうした日本の丁寧さと韓国のスピード感、それぞれの強みを取り入れていくことが、結果として最良のアウトプットにつながるのではないでしょうか。
韓国の少子高齢化は日本以上のスピードで進んでいます。2025年の合計特殊出生率が 0.80(暫定値)という現状を見れば、2030年代には韓国でも急激に若者が減り、企業が採用に苦労する「超・売り手市場」が到来するはずです。そうなれば、現在の「激しい競争」という構図も、否応なく変わらざるを得ません。
日本の「丁寧な育成」と韓国の「決断の速さ」を掛け合わせたハイブリッドな働き方が、これからの日韓両国にとって、共通の課題を解決する鍵になるのではないかと考えています。
次回の記事では、韓国の大手サムスングループから日本のIT企業に転職したエンジニアの方にインタビューをした様子をお届けする。
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