積水ハウス「幸せ度調査」で分かった、長時間労働より部下を追い詰める「理不尽」の正体:「褒めて伸ばす」は思い込み?(5/5 ページ)
積水ハウスグループは020年から毎年、従業員の「幸せ度調査」を続けている。同社のデータからは、労働時間の長さは「オーバーワーク」と感じるかどうかに、それほど関係がないという結果が出た。
調査を基に、社員たちも自らアクションを重ねている
このように幸せ度調査の結果から、経営上の重点施策が社員の幸福にどのような影響を及ぼしているかの確認ができる。しかし、調査の一番の目的は、社員自身の自己理解や、職場での対話のきっかけづくり、それを通じた相互理解の促進にあるようだ。
あるチームでは、年に一度の調査結果が出たタイミングで、自分や所属する組織の結果を見て、話し合う機会を設けている。そのような活動を経て、社員からは「自分だけではなく周囲の人の幸せ度合いを共有することで、職場環境に何が必要かなどを知れた」といった声が上がる。また「家が完成したときなど、お客さまとの幸せな瞬間を撮影した写真を部署内で共有するようになった」など、職場の幸福度を向上するための具体的なアクションの報告も届いているという。
幸せ度調査への回答を通じて、自分の幸福がどのような要因で成り立っているかを多面的に振り返る。そして個人や職場の結果を確認しながら対話することで、人の幸せと不幸せにはさまざまな要因があること、また職場全体の幸福度が、日々の仕事の質や成果にも影響することを自然と理解できるようになる。この一連のプロセスを毎年繰り返すことで、同社の社員一人ひとりの「幸せリテラシー」が向上し、日常のふるまいや職場での関わり方も少しずつ変わっていっているのだろう。
必要なのは「表面的な褒め」「厳しいことを言わないこと」ではない
幸せ度調査の結果からは、仕事における「オーバーワーク」が「理不尽」「リフレッシュ」「ストレス」という幸せを左右する要因との相関があると分かっている。一方で、労働時間の長さは「オーバーワーク」と感じるかどうかに、それほど関係がないという結果も出ている。
つまり「上司から理不尽な要求をされている」「仕事を押し付けられている」と感じていたり、仕事のストレスが払拭(ふっしょく)されない状態が続いたりしていると、労働時間がそれほど長くなくてもオーバーワークと感じやすい。逆に、やらされ感ではなく主体的に取り組んでいる人は、労働時間が多少長くてもオーバーワークとは感じづらいということだ。
部下のモチベーションを保つために、厳しいことは言わないようにしよう、なるべく良いところを見つけて褒めよう、と日々苦心している管理職も多いだろう。しかし、褒めてやる気にさせようとするよりも、部下が自らやる意味があると感じられるような仕事の渡し方をしているかどうかの方が、よほど大切なのかもしれない。
それがうまくいけば、本人は自律的に仕事に取り組み、自分自身で幸せ度を高めていく。その結果生産性も高まり、上司が無理して褒めるべき点を探さずとも、自然と成果を認め、喜びあえるような結果が期待できるからだ。
社員の幸せを「会社が与えるもの」としてではなく「自らが育てるもの」として位置付ける積水ハウスのアプローチは、社員・管理職・組織のそれぞれに良い影響をもたらしている。幸せリテラシーの高い社員が増えることで、職場の対話が豊かになり、チームとしての成果も高まる。その結果が組織の力となり、顧客の幸せへとつながっていく。幸せ度調査は、そのような循環を生み出すための強力な仕掛けだと言えそうだ。
やつづかえり
コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。
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