「必要以上に頑張らない」は悪いこと? 熱意あった若者がやる気をなくすワケ:日本人の7割が「静かな退職」状態(1/2 ページ)
退職するわけではないけれど、仕事への熱意も職場への帰属意識も薄い――という状態が「静かな退職(Quiet Quitting)」が注目されている。日本においても、会社員の7割以上が静かな退職状態だという調査結果がある。やる気をもって入社した若者たちが静かな退職を選ぶことを防ぐにはどうしたら良いのか、考えてみよう。
この4月、職場に新入社員を迎えたという読者もいるだろう。
彼らの多くは「早く仕事を覚えたい」「会社や社会の役に立ちたい」という前向きな気持ちで入社したに違いない。しかし、数年のうちに「仕事はほどほどに」「言われたことだけやっておこう」という消極的な姿勢に変わってしまうことも少なくない。
アメリカでは2年ほど前から、退職するわけではないけれど、仕事への熱意も職場への帰属意識も薄い――という状態が「静かな退職(Quiet Quitting)」と名付けられて注目されるようになった。
日本においても、会社員の7割以上が静かな退職状態だという調査結果がある。彼らはなぜ働く気力をなくしたのか。やる気をもって入社した若者たちが静かな退職を選ぶことを防ぐにはどうしたら良いのか、考えてみよう。
「必要以上に頑張らない」は悪いこと?
筆者の調べた限り、アメリカや日本で「静かな退職」が“増えている”ことを裏付ける明確なデータがあるわけではない。
2022年9月に調査会社のギャラップが「アメリカの労働者の50%以上が『静かな退職』状態にある」というレポートを出してニュースになり、23年も同様の結果が発表されている。しかし、以下の17年と23年の公表値を比較して分かる通り、これはここ数年に限った話ではないのである。
静かな退職はここ数年に限った話ではない(出典:「2023年版 ギャラップ職場の従業員意識調査:日本の職場の現状」および「In New Workplace, U.S. Employee Engagement Stagnate」「State of the Global Workplace report - 2017」)
とはいえ、コロナ禍をきっかけに多くの人が生き方や働き方を見つめ直したことは確かだ。そして、仕事に情熱を注いでイノベーションを生み出す起業家や、どんどん転職を繰り返してキャリアアップしていくビジネスパーソンがもてはやされる風潮に、「それって本当に幸せなの?」という疑問の声も目立つようになった。
「静かな退職」は、そんな価値観の変化をうまく捉えた言葉として流布したのだろう。
ここで私たちが問題にすべきは、日本においては「静かな退職」が7割超と、諸外国に比べても非常に高い割合を占めている点だろう。
会社に不満をぶつけたり転職したりするそぶりもなく、そこそこちゃんとやっているように見える社員が、実は「必要以上に頑張らない」という冷めた気持ちで仕事に向かっているかもしれないのだ。
人手不足の今、「辞めないでいてくれるだけでありがたい」という会社もあるかもしれない。「『こんな仕事じゃ成長できません』とか『これをやって何の意味が?』なんて言ってくるよりも、指示したことだけやってくれる方が助かる」という管理職もいるだろう。
しかしこれからの時代、上の指示に従うだけの若手が増えていったら、その会社の将来は危うい。
というのも、今は過去に成功したことを繰り返していれば安泰という時代ではない。中堅以上の社員や役員からは出てこないような発想こそが若手に期待されることで、前例にない道を開拓していけるような人が次世代のリーダーになっていくのだから。
そもそも「言われたことをきちんとやる」にしたって、やる気をもって取り組むかどうかで結果は変わってくる。社員のエンゲージメントと生産性や顧客満足度、会社への定着度などには正の相関がある、という分析もなされている(厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」)。
個人の側から見ても、人生の多くの時間を占める仕事の時間を「早く終わらないかな」とか「意味のないことをやってるな」と思いながら過ごすのだとしたら、それは幸せだとは言えないのではないか。もちろんプライベートや健康を犠牲にするほど仕事を優先すべきではないが、仕事を通じて得られる喜びや充実感もあるはずだ。
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