「ホロライブ」運営のカバー、メタバース事業撤退で30億円超減損……Vtuber事務所、成長の道はどこにあるのか(2/3 ページ)
2026年5月14日、VTuberグループ「ホロライブ」を運営するカバー(東京都港区)は、メタバースプロジェクト「ホロアース」のサービスを6月28日で終了すると発表した。壮大な「夢」からの撤退を決めた同社。次なる成長の道はどこにあるのか。
「色々やりすぎた」 ホロアース失敗の構造
ホロアースは、カバーが2025年4月に正式リリースしたメタバースサービスだった。ホロライブのキャラクターやファンが集うバーチャル空間で、ライブも、ゲームも、コミュニケーションも、全てを束ねる、同社の「次の収益柱」になるはずだった。
決算説明会で谷郷社長は、終了の理由として色々な要素を盛り込みすぎたという反省を語った。タレントにとって本業の配信プラットフォームと、新規メタバースが社内で食い合う構造になっていた、という率直な総括である。
メタバース事業そのものが死んだ、という話ではない。Robloxやフォートナイトといったユーザーが投稿するタイプの仮想空間ゲームは世代を超えたプラットフォームになりつつある。問題は今のカバーには配信アプリとメタバースの両方を並走させる体力がなかったということだ。
TCG・ライブ・ライセンスという安定成長エンジン
では、Vtuber事務所の成長余地はもはや乏しいのか。決算の細部を見る限りまだ可能性は残されている。
カバーの決算を部門別に確認すると、ライブ・イベント収益が前年比18.7%増、ライセンス・タイアップが同25.3%増、マーチャンダイジングが同15.6%増だった。
インターネット上の活動よりも、人や実物商品が動く「実業」が伸びていることが分かる。なかでも目を引くのが、トレーディングカードゲーム「ホロライブ・オフィシャル・カードゲーム」だ。2026年3月期で売り上げは約72億円、累計2000万パック超を販売したという。新規参入したTCG(トレーディングカードゲーム)として、市場に存在感を示しつつある。
ライバルのANYCOLORも同様に、ライブとコマースが成長をけん引している。2026年4月期通期予想は売上高520億円から540億円、純利益145億〜152億円と上方修正を続けている。
両社が描く成長の青写真は、もはや「VTuberの配信会社」ではなく「IPを軸にした総合エンタメ企業」に近い。
警戒すべきシグナルもある。カバーの事業の柱の1つ「配信・コンテンツ売上」が、前年比2.0%の微減に終わった。その要因は、人気タレントの卒業に伴う活動量の減少と、海外向け関税環境の悪化によるEC売上の伸び悩みだ。
IPの担い手は生身のタレントである以上、卒業・契約満了は避けられない。「個別タレントへの依存」をどう薄めるかは、TCGやライセンス事業の拡大と並ぶ、もう一つの構造的課題である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ジャングリアの「刀」累積損失62億円の衝撃 イマーシブ・フォート東京撤退で露呈した“死角”
USJを再建した森岡毅氏率いる「刀」が、かつてない危機に直面している。官報で判明した62億円の累積損失と、わずか2年での旗艦施設閉園。数学的マーケティングはなぜ「自社事業」で躓いたのか。その背景と沖縄事業への懸念を分析する。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
ニトリHDの時価総額半減……「36期成長神話」が崩壊した、これだけの理由
36期連続成長を成し遂げたニトリが、苦境に陥っている。その原因は、似鳥会長の相場観にあるのかもしれない……。
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体
今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。これはなぜだろうか。決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、株式市場の評価とは乖離した実態が浮き彫りになる。
「あの時気付いていれば……」 モンスター社員を面接で見抜く、たった一つの重要質問
彼らは「嘘をついている」わけではない。ゆがんだレンズを通して世界を見ているため、彼らにとって「正しいこと=周囲が悪であること」という構図は、疑いようのない真実として映っているのだ。