ジャングリアの「刀」累積損失62億円の衝撃 イマーシブ・フォート東京撤退で露呈した“死角”(1/4 ページ)
USJを再建した森岡毅氏率いる「刀」が、かつてない危機に直面している。官報で判明した62億円の累積損失と、わずか2年での旗艦施設閉園。数学的マーケティングはなぜ「自社事業」で躓いたのか。その背景と沖縄事業への懸念を分析する。
マーケティング界の寵児として、またユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復に導いた最大の功労者として知られる森岡毅氏率いる株式会社「刀」(以下、刀)が、かつてない経営の崖っぷちに立たされている。
その発端は、官報に掲載された同社の決算内容が示している。第8期、第9期の連続赤字により、累積損失は62億円に達した。その影響もあって同社が企画・運営する東京・湾岸エリアのテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」が、オープンから2年足らずの2026年2月で営業終了となる。
「データに基づく経営」を標榜(ひょうぼう)してきた同社が、なぜ自ら手掛ける旗艦プロジェクトでこれほどの巨額損失を招いたのか。その背景には、コンサルティング業務と実業運営の間に横たわる構造的な乖離(かいり)と、USJ時代の成功体験を汎用化することの困難さが浮き彫りになっている。
財務諸表が示す「構造的赤字」の正体
刀の財務状況を詳細に分析すると、その危機的な水準が鮮明になる。
第8期(2024年決算)において計上された55億4600万円という巨額の最終赤字は、テーマパーク建設に伴う初期投資と解釈できる。しかし深刻視すべきは、施設が開業し、収益を生むフェーズにあったはずの第9期(2025年決算)においても、13億700万円の最終赤字を継続している点だ。
これは、入場料収入や物販収益を柱とする営業収益が、賃料や人件費、広告宣伝費といった運営経費および償却損をまかなえていない状態にあることを示唆している。一言でいえば、集客数と客単価が施設の維持コストに見合っていなかったというわけだ。
こうした事態を受け、同社は資本金を1億円以下に減資する措置を断行した。これは日本の税制において、外形標準課税の対象から外れ、法人税率の軽減や過去の赤字を将来の黒字と相殺しやすくするための典型的な財務的防衛策である。しかし、この施策にはデメリットもある。
赤字を伴いながらも業績が急成長しているような企業にとって、減資は一般に有効である。しかし、業績を悪化させている企業が実利を優先して税制上の優遇措置にすがらざるを得ない場合は、同社のキャッシュフローが逼迫(ひっぱく)していることを投資家に示唆することとなり、将来的な資金調達や事業経営が一層困難になる場合がある。
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