ジャングリアの「刀」累積損失62億円の衝撃 イマーシブ・フォート東京撤退で露呈した“死角”(2/4 ページ)
USJを再建した森岡毅氏率いる「刀」が、かつてない危機に直面している。官報で判明した62億円の累積損失と、わずか2年での旗艦施設閉園。数学的マーケティングはなぜ「自社事業」で躓いたのか。その背景と沖縄事業への懸念を分析する。
USJの成功は「強力なIP」あってのものだったのか
刀の失速を巡り、世間が指摘するのは「USJの成功体験は森岡氏だけの功績ではない」という言説である。しかし、これは半分正しく、半分間違っているというべきだろう。
森岡氏がUSJで成し遂げた業績のV字回復は、今日まで刀の信用力の源泉となってきた。その最大の要因は2014年に導入されたハリー・ポッターエリアの成功だ。
この世界的IP(知的財産)のライセンス交渉は森岡氏の入社以前から進められていた可能性もある。また450億円に及ぶ巨額投資を支えたのは当時の筆頭株主であるゴールドマン・サックスの資本力であった。その点を踏まえ、森岡氏の知見は資本的背景やIPの既存価値に恵まれた結果にすぎないと指摘する声も一部には存在する。
だが、USJがハリー・ポッター以前からも世界的IPを活用していたにもかかわらず業績が低迷していたことを考えると、「他人のふんどし」理論とは矛盾しないだろうか。森岡氏の功績は、0から1を生み出すことよりも、マーケティングの力でIP効果を1から100へと最大化した点にあるというべきだ。
これに対して、今回のイマーシブ・フォート東京や2025年に沖縄で開業した「ジャングリア沖縄」において、刀は自ら資金を調達し、IPも独自開発か、あるいは比較的規模の小さいライセンスで戦わねばならなかった。
強力なIPと潤沢な資本という前提条件を欠いた状態で、数学的マーケティングという「増幅装置」を稼働させても、期待された収益を生み出すことは難しかった。資産運用で例えると「1億円を100倍に伸ばせば100億円になるが、100円を100倍にしても1万円にしかならない」といった具合だ。手法がどれだけ優れていても、「元手」の規模が小さければ限界があるのかもしれない。
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