「もうClaudeでいいじゃん」の恐怖――マネーフォワードが挑む“三正面作戦”(2/4 ページ)
「汎用AIで十分ではないか」――米巨頭の進撃に日本のSaaS陣営が震撼した。生存をかけ、わずか2カ月で全方位作戦へと舵を切ったマネーフォワード。14兆円の新市場を巡り、彼らが下した「最大の賭け」とは。
SaaS企業に残された3つの道
Anthropicが「Claude Cowork」で業務領域に踏み込み、SaaSが担っていた機能を汎用AI一つで代替しうる懸念が出てきた、いわゆるAnthropicショック。これを前にしたとき、SaaS企業の取り得る主要な道は3つに整理できる。
第1に、既存プロダクトのなかにAIエージェントを機能として組み込む路線だ。第2に、MCPサーバを公開し、自社SaaSを外部の汎用AIから「呼び出される側」として開く路線。第3にAIエージェントをUIの中心に据え、AIが業務を遂行する場所を抱え込む路線である。
3つは対立しない。組み合わせも可能で、どこに開発リソースを多く割くかが各社のポジションを決める。SaaSに組み込まれたAIエージェントは、あくまで人が主役の業務をサポートする位置付けだ。一方でAI Coworkのようなプロダクトは、人の労働そのものを代替する場所として設計される――というのが山田氏の見立てだ。
第1の道――既存SaaSへのAI組み込み
第1の組み込み戦略は、SaaS各社が真っ先に打ち出してきたものだ。既存SaaSの強みをAIで補完するもので、主役はSaaS、AIはそれを支える側に回る。
マネーフォワードが当初進めてきたのも、この路線にあたる。既存のクラウドサービスのなかに、「チームに加わり、共に働く頼れるAIエージェント」として複数のエージェントを順次組み込んできた。経費申請サポート、交際費精算、請求書ダウンロード代行、支払依頼申請サポート、未入金回収サポート、固定資産登録サポート、業績分析、リース契約の識別――担当者の作業を肩代わりするエージェントが、業務領域ごとに用意されている。
組み込み型の強みは、既存ユーザーがそのまま使え、業務ロジックに沿ってAIが動く点にある。使い勝手は既存のSaaSのままなので、学習コストもかからない。ただし、SaaSの在り方をAIで強化するという発想にとどまり、SaaSと人間の関係性そのものは従来と大きくは変わらない。全てのSaaSがAIに飲み込まれるわけではないし、SaaSの価値が消えるわけでもない。AIによって世界が大きく変わっていく流れに対しては、守りの戦略といえる。
同じ「組み込み型」でも各社の打ち出しには差がある。freeeも会計や人事労務にAIを埋め込んでいるが、対外的には2月発表のAIビジョン「freeeコックピット」といったMCP対応の打ち出しが強い。マネーフォワードはこの組み込みエージェント群で実績を積み上げつつ、AI Coworkで後述する第3の道にも踏み出した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
「2026年にキャッシュレス先進国? 難しいだろう」――Visa日本社長が語る"後半戦"の現実
Visaが行ったタッチ決済の普及などを目的とした「大阪エリア振興プロジェクト」は、タッチ決済比率74%、利用者180万人増と全国平均を大きく上回る成果を収めた。今後日本でのキャッシュレス化はどのように進むのか。
ニトリHDの時価総額半減……「36期成長神話」が崩壊した、これだけの理由
36期連続成長を成し遂げたニトリが、苦境に陥っている。その原因は、似鳥会長の相場観にあるのかもしれない……。
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体
今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。これはなぜだろうか。決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、株式市場の評価とは乖離した実態が浮き彫りになる。
「あの時気付いていれば……」 モンスター社員を面接で見抜く、たった一つの重要質問
彼らは「嘘をついている」わけではない。ゆがんだレンズを通して世界を見ているため、彼らにとって「正しいこと=周囲が悪であること」という構図は、疑いようのない真実として映っているのだ。