「2026年にキャッシュレス先進国? 難しいだろう」――Visa日本社長が語る"後半戦"の現実(1/4 ページ)
Visaが行ったタッチ決済の普及などを目的とした「大阪エリア振興プロジェクト」は、タッチ決済比率74%、利用者180万人増と全国平均を大きく上回る成果を収めた。今後日本でのキャッシュレス化はどのように進むのか。
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
「最も安全な取引とは、『取引が起きない』ことだ」――Visaのリスク責任者はかつてそう言ったという。つまりどんな取引にもリスクはつきものだというわけだ。しかし、それでは商売にならない。セキュリティと利便性のどちらも譲らない強い姿勢が、日本のキャッシュレス化を阻んでいる。
Visaは2024年から「大阪エリア振興プロジェクト」を展開し、地域のスーパーや飲食店、交通機関などでタッチ決済の普及促進キャンペーンを行った。結果は、タッチ決済比率74%に上昇し、利用者は180万人増えた。
全国平均を大きく上回る成果を背景に、2026年に全国展開に打って出ようとしている。シータン・キトニー社長にキャッシュレス化“後半戦”の戦略を聞いた。
大阪の「実験」で何が起きたのか
――Visaが行ったタッチ決済の普及促進キャンペーンを振り返り、最も大きな成果は何ですか。
キャンペーンの実施当初、多くの人は「購入時点でのディスカウント施策にすぎない」と考えていました。しかし実際には、それ以上の成果を得られました。
最大の成果は、決済のエコシステム全体を一つにまとめられたことです。加盟店、カード発行会社、アクワイアラー(加盟店管理会社)、中間事業者、そして政府。これだけ多くの関係者が足並みをそろえたことで、特定の地域でキャッシュレス化を加速させる新しいアプローチを推進できました。
プロモーションだけではなく、新しいプロダクトや機能を投入し、消費者向け・加盟店向けの両面で新たなマーケティング手法を展開。地域を絞って新技術の普及を一気に進めるための手応えを得られました。
この成果は数字にも表れています。大阪のタッチ決済浸透率は74%と、全国平均の66%を大きく上回りました。タッチ決済の利用者数は180万人以上増え、日常の買い物で電子決済を使う動きが確実に広がりました。
利害関係者が足並みをそろえて動けば、市場を変えられる。それを証明できた実験でした。
――2026年は、どのように展開していく予定ですか。
大阪で約18カ月かけて得た知見を全国に広げていく予定ですが、コンセプトは同じで規模を拡大するイメージです。
大阪で学んだのは、「地元密着型」の取り組みが欠かせないということです。プラットフォームやインフラは全国共通で標準化しながら、マーケティングの手法やキャンペーン内容は都道府県ごとに変える。全国一律ではなく、地域特性に合わせて展開していく予定です。
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