新卒より生成AIがいい──初任給バブルの裏で、大手企業が進める“超厳選採用”は何をもたらすのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/2 ページ)
日本の雇用慣行において、長らく“最後の聖域”とされてきた「新卒一括採用」に、今すさまじい地殻変動が起きています。名だたる大手企業が相次いで新卒の「厳選採用」へ舵を切っているのです。
日本の雇用慣行において、長らく“最後の聖域”とされてきた「新卒一括採用」に、今すさまじい地殻変動が起きています。
マイナビの調査によると、2027年卒の採用予定数を「増やす」とした企業は23.0%。2025年卒の32.0%、2026年卒の29.4%から2年連続で減少しました。
パナソニックホールディングスが前年度比100人減、クボタが前年の約4分の1となる60人に絞り込んだほか、サントリーや関西みらい銀行など、名だたる大手企業が相次いで新卒の「厳選採用」へ舵を切っています。
SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は、2026年3月に登壇したイベントで、人工知能(AI)の活用を進めることで採用を大幅に抑制する方針を明言。「よっぽど優秀でないと採用するなと人事部に言っている」と断言するなど、市場は今、明確に「数から質(それも超エリート)」へとシフトしているのです。
ちょっと前まで「我が社にいらっしゃい!」競争を繰り広げ、初任給バブルが起きていたのが、まるで嘘のようです。
一方で、私は常々、新卒一括採用を批判してきました。新卒採用とセットだった「終身雇用」が完全に崩壊してもなお「一括」というコスト削減採用を続け、学生生活の半分を「シューカツ」に費やすことを強いるこのシステムが、バカバカしいと考えていたからです。
しかし、今回起きている「採用枠の減少」は、そうした制度批判とは全く異なるベクトルから、日本型雇用の根幹を揺るがしています。そこで今回は「超厳選採用」と「生成AI」の挟み撃ちにあう、新卒市場の現状とこれからを考えてみます。
新卒を絞り込む2つの理由
大手企業がこれほどまでに新卒を絞り込む背景には、大きく分けて2つの構造変化があると推察します。
第1に「入社5秒でマジ退社」などと揶揄(やゆ)される「超早期離職」に代表される、若者のキャリア観の変化です。
一人の新卒を採用するのに100万円以上、さらに戦力化するための教育コストに数百万円。これだけ投資した新人に、リターンを生むどころか、仕事を覚える前に「サヨナラ」を告げられては、企業としては大赤字です。
たとえ新人時代を乗り切っても、30代で管理職昇進を嫌がったり、転勤を拒否したり、あげく転職されては、企業が莫大なコストと時間をかけてまで「育成型の採用」を維持する理由は、もはやどこにも見当たりません。
第2に、新卒の業務の多くがテクノロジーで代替可能になったことです。アカリク(東京都渋谷区)が実施した調査では、企業が新卒採用の戦略や方針を見直した理由として「生成AIを活用できる人材を重点的に採用したいから」が66.7%となりました。今後の新卒選考では「インターンシップで生成AI活用課題を実施する」企業が54.5%に達しています。
つまり企業は今、単なる「労働力としての頭数」ではなく、はじめから「AIを使いこなせるという武器を持った即戦力」だけを選別しようとしているのです。
見方を変えれば、これまでの「指示待ちの新卒」がやっていた定型業務は、すでにAIで事足りるという厳しい現実です。AIの利用料を人件費と捉えれば、新卒社員の給料よりもはるかに低く、SNSテロなどの不始末を起こすリスクもない。最大の利点は、24時間365日働かせてもなんら問題ない点でしょう。
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