顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
米国で最近、「Coffee badging」という働き方が流行っています。出社後、コーヒー1杯で帰ってリモートワークをするというものです。
酷暑が続いています。
極端気象アトリビューションセンターの分析によると、7月下旬の記録的な高温は、人間活動による地球温暖化の影響がなければほぼ起こり得なかったとか。現在の気候条件での発生確率が、31年に一度程度の確率で起こり得るものだったのに対し、温暖化が進んでいない場合、1万1472年に一度程度だったそうです。
これだけ暑いと「リモートにした方がいいのでは?」と思うのですが、そういった動きは出ていないよう。数年前よりは柔軟になったとはいえ、台風が来ようと、電車が止まろうと、あの手この手で「会社に来い!」が日本のスタンダードです。
「令和6年度テレワーク人口実態調査」によると、勤務先にテレワーク制度などが導入されている就業者の割合は、2024年度から約2ポイント減少して33.1%と半数以下です。あくまでも私見ですが、管理職の場合は、結果的に毎日出社しているケースがほとんどなので、大きな流れとしては、米国企業同様、出社回帰が加速していると考えられます。
日本の高度経済成長を支えた「つながる場所」が再注目されている
そんな中、米国で最近流行っているのが、「Coffee badging(コーヒーバッジング)」です。これは会社が定める出社回帰の義務を果たすためだけに出社して顔を見せ、一杯のコーヒーを飲み、同僚や上司にあいさつをするなど軽く交流し、すぐに帰宅してリモートワークを続けるという働き方です。調査によってばらつきはあるものの、ホワイトカラー労働者の約5人に1人がコーヒーバッジングをしていると推計されています。
コーヒーバッジングへの評価は、経営者や専門家でも二分されています。出社義務があるにもかかわらず、実際には短時間しかオフィスにいない行為は、契約上の義務を果たしていない=時間と金銭の窃盗(Time Theft)と見なす意見がある一方で、現代の働き方の変化を象徴する、合理的で建設的な行動と好意的に解釈する人たちもいます。
日本ではコーヒーバッジングをする度胸のある社員は、さすがにいません。しかし、会議だけ出て、外のカフェなどで仕事をする人や、フレックスタイム制を利用して、早めに出社して早く帰るという働き方をしている人は少なくありません。業種によりますが、一人で仕事した方が集中できるので、働く場は会社である必要はないと考えるのでしょう。
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