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伊藤園、純利益「75.5%減」 139億円減損が告げる「自販機ビジネス」の曲がり角古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」

飲料メーカー大手の伊藤園が6月1日に発表した2026年4月期の連結決算では、当期純利益は同75.5%減の34億円と、大幅な減益で着地した。利益を吹き飛ばしたのは148億円にものぼる減損損失で、そのほとんどが自動販売機事業で計上した損失となった。

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筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 飲料メーカー大手の伊藤園が6月1日に発表した2026年4月期の連結決算は、売上高が前期比5.3%増の4978億円と、増収で着地した。

 しかし、当期純利益は同75.5%減の34億円と、大幅な減益で着地した。


伊藤園 2026年4月期 実績(伊藤園 2026年4月期決算説明会資料

 利益を吹き飛ばしたのは148億円にものぼる減損損失(減損:資産の帳簿価値がその回収可能額を上回る場合に、その差額を損失として計上する会計上の処理)で、そのうち自動販売機事業で計上した損失は約139億円にも達した。

 原材料費・物流費・人件費の上昇が続く一方で、販売数量の低下に歯止めがかからず、「経営環境の著しい悪化」を理由に、自販機関連資産の帳簿価額を一気に切り下げた。

 株価も、2022年の7000円台から足元では半値以下の2700円近辺で推移しており、復調の兆しが見えない。


伊藤園の株価推移(出所:TradingView、記事執筆時点)

 しかし、これは伊藤園1社の問題ではない。半世紀にわたり日本の飲料ビジネスを支えてきた「自販機モデル」そのものが、構造的な転換点を迎えつつあることを告げる決算である。

「自販機を制する者が飲料を制す」時代の終わり

 まず、自販機がどれほど特別なチャネルだったかを理解しておきたい。

 自販機は飲料メーカーにとって長らく花形の販売装置だった。自販機向けの販売は、小売業者向けと比較して高い利益率をメーカーにもたらした。

 飲料は卸値ではなく定価で売れる。自社製品だけを並べられるため、棚の奪い合いもない。

 立地さえ押さえれば、24時間黙って高い利益率を維持しながら稼ぎ続ける。各社は競って台数を増やし「自販機網の規模」がそのまま飲料メーカーの力を意味する時代が続いた。

 しかし、飲料自販機の稼働台数は2024年に204万台と、ピークから40万台以上減少している。自販機全体で見れば稼働台数はピークから約3割減であるという(※)。30年かけて、自動販売機はじわじわと街角から姿を消しているのだ。

※参考:時事ドットコムニュース「飲料自販機、物価高で逆風 生き残りへ新価値を模索―メーカー各社」日経新聞「自販機の稼働台数はピークから3割減 飲料メーカーの戦略がわかる9選」


伊藤園の決算短信より

自販機ビジネスをむしばむ3つの変化

 何が自販機ビジネスを追い詰めているのか。要因は3つに整理できる。

 まずはドラッグストアやコンビニなどとの競争だ。24時間いつでも買えて品ぞろえも豊富な店舗が自販機の至近距離に立つようになった。

 物価高による消費者の防衛行動も自販機離れに追い打ちをかけている。マイボトルを持ち歩く、量販店でまとめ買いする、通販の大安売りで箱買いするといった行動が定着し、定価販売が前提の自販機は真っ先に避けられる選択肢になった。ペットボトル1本200円が視野に入る値上げ局面では、この傾向はさらに加速する。

 ただし、これらの要因よりも根深い変化が訪れている。

 それはコスト構造だ。自販機は設置、補充、電気代、現金回収、メンテナンスまで人手と費用がかかるビジネスであり、人件費と物流費の上昇が採算性を弱らせる。販売数量が減って1台当たりの売り上げが落ちる一方、維持コストは上がり続ける。

 売り上げが減り、コストは増える。それでも台数を維持すれば固定費が重くのしかかる。会計上、将来における投資回収の見込みを下方修正するのであれば、減損は避けられない。

 伊藤園の139億円は、自販機を取り巻く構造変化を会社が公式に認めた瞬間だった。


伊藤園、純利益「75.5%減」から垣間見える、自販機ビジネスの不調(伊藤園公式Webサイトより)

「減損ドミノ」──コカ・コーラBJHは881億円の減損、ダイドーは2万台撤去

 実は、自販機ビジネスを展開するメーカーが巨額減損に陥ったのはこれが初めてではない。

 業界最大の自販機網を持つコカ・コーラ ボトラーズジャパンHDは2025年12月期に、自販機事業で881億円という巨額の減損損失を計上し、最終赤字507億円に沈んでいた。

 減損の対象は自販機本体にとどまらず、工場の製造設備や物流拠点にまで及ぶ。同社は決算の事業区分も「自販機」「小売・EC」「外食」に組み替え、自販機を独立採算で監視する体制に改めた。

 自販機への依存度が特に高いダイドードリンコも、自販機約2万台の撤去方針を打ち出した。飲料メーカー各社は自販機の縮小ないし撤退へ急いでいる。

 数字の規模は違えど、意味するところは同じである。業界の主要プレーヤーが相次いで「自販機は成長チャネルではなく、縮小管理すべきレガシー資産」と認識しつつあるのだ。

伊藤園決算が映す「次の収益源」への入れ替え

 では、自販機で失う利益を何で埋めるのか。伊藤園の決算によれば海外に希望を見出している様子がうかがえる。

 主力のリーフ・ドリンク関連事業は、海外での日本茶需要拡大を追い風に増収を確保した。伊藤園は2024年4月に大谷翔平選手と「お〜いお茶グローバルアンバサダー」契約を締結して以降、北米を中心に販売を伸ばしており、大谷効果で販売数量が大きく伸びた実績もある。

 緑茶・抹茶は北米の健康志向の追い風を受け、販売地域を現在の40超から100以上の国・地域へ広げる構想も掲げる。

 ただし移行はまだ道半ばだ。減損後も自販機網の維持費は発生し続け、値上げによる販売数量減という逆風も止まらない。

 来期の純利益予想は、減損影響の反動で229.7%増の114億円と一見V字回復だが、営業利益予想は7.8%減の200億円にとどまる。

選別が始まる

 誤解してはいけないのは、自販機が日本から消えるわけではない、ということだ。

 災害時のライフライン機能、オフィスや工場という店舗が成立しない立地、キャッシュレス化やIoTによる在庫・配送の効率化など、自販機にしか果たせない役割と改善の余地は残っている。

 ただ置けばもうかる時代が、終わっただけだと言うべきだろう。

 映像や漫画などの創作物において、街角の自販機は「日本の日常風景」を描く上で欠かせない存在だった。しかし、その共通認識が近い将来には失われるのかもしれない。

 139億円の減損を期に伊藤園の復活は期待できるのか。同社における今後の海外展開にも引き続き注目していきたい。

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