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考えるSaaSは死に、SoRが生き残る──急成長中Sansan「Contract One」から読み解くリーガルテックの明暗(3/4 ページ)

契約業務系のリーガルテックは、大きく分けて「契約レビュー」と「契約管理」の2つ。このうち、契約レビューは生成AIの影響が早期に表れたSaaS領域の一つだ。明暗を分けた線は、どこにあるのか。

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では、どのツール群が記録の分野で覇権を握るのか

 では、誰が記録を握るのか。CRM、SFA、ERP、人事システム──どれも契約の要素を少しずつ抱えているが、いずれも部分的でしかない。「どれもちょっとずつ契約の要素を持っていて、バラバラ」と尾花氏は指摘する。

 最も要素が漏れにくいのが、契約に関連する業務だ。取引が成立すれば、契約書、注文書、覚書、付属書類など、何らかの取引記録が残る可能性が高い。SFAへの登録は営業の判断で漏れ、支払いマスターは取引の一部しか反映しない。

 例えば、媒体企業では広告営業はSFAで顧客情報を管理する一方、イベント事業は別部署が別ツールで管理する。それぞれのマスター同士は突き合わず、合致しない取引が残る。だが契約に類する記録は、取引があった以上、何らかの形で残っている。

 Sansanは、契約データベースを取引関係の確定記録、いわば「正本」に押し上げる動きを進めている。そしてデータベースをAIに開く方向に舵を切った。「出来上がったデータベースを、AIにいくら使っていただいてもウェルカムだ」と尾花氏は言う。

 SaaSの堀、すなわち競合に対する優位の源の意味もひっくり返る。従来の堀は囲い込みであり、乗り換えコストの高さだった。新しい堀は、エージェントに最初に参照される、最も機械可読で信頼できる情報源であること──開放性の側にある。SaaSの防御力の定義が、ロックインから「AIに選ばれること」へ移りつつあるというのが、Sansanの読みだ。

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Sansanは、契約データベースを「正本」に押し上げる動きを進めている(提供:ゲッティイメージズ)

過去の契約が、AIの判断を支える

 では、開放性の向上は、どのように実現するのか。Contract OneのMCP(Model Context Protocol)対応がその答えだ。

 MCPは、AIアプリケーションを外部システムやデータソースに接続するためのオープン標準だ。これに対応したことで、AIエージェントが契約データベースを参照しながら、レビュー、稟議、商談準備のそれぞれの場面で、情報を参照できる。同機能の提供は2026年4月から始まっている。

 例えば、新しい契約交渉の場で、過去合意した条件を契約データベースから参照する。10年前の契約も、グループ会社で結んだ契約も情報をたどれるため、顧客に「あなたたちは過去にこの条件を了承してくれた」などと提示できる。法務の仕事はリスクを減らすことだけでなく、問題なく妥結することでもあり、後者の場面で大きく効果を発揮する。

 Sansan法務での先行活用では、法務相談の問い合わせから問題解決までの所要時間が約40%削減されたという。Claude連携開始後の2026年3月と、それ以前の1年間を比較した数字だ。

 稟議のビジネス条件チェックでは、過去どんな条件で締結したかが判断材料になる。営業の商談準備でも「この会社との契約はどうなっているか」という確定取引関係の確認が最初に来る。CRM、SFA、ERPがそれぞれ部分的にしか持たない情報を、契約データベースが集約していくわけだ。

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