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「利益だけが目的なら、“ものづくり”じゃなくていい」 製造業がつまらなくなる“鉄板パターン”(3/3 ページ)

人手不足やコスト上昇、資本市場からの収益性向上要求など、日本の製造業を取り巻く環境は厳しさを増している。一方で、効率化や合理化を追求するだけでは、ものづくりの現場から失われてしまう価値もあるのではないか。経営学者と2人の経営者が、数字やロジックだけでは語れない製造業経営の本質を探った。

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会社の哲学は「社長のエゴ」から始まる

宇田川教授 友安製作所さんでは、現場の人が自らの意志で動き、楽しんでいる。でも、製造業の中には、そうした「自分たちらしさ」や「誇り」をどのように醸成すればいいのか、スタート地点に立てない企業も多いように思います。登山口には、どうすればたどり着けるのでしょうか。

友安社長 社員自身が「自分たちで会社を変えられるんだ」と気付くことではないでしょうか。当社では徹底して1on1ミーティングを実施していますが、その中で「会社に求める環境って何ですか?」と聞いています。

 例えば当初は「工場のトイレを和式から洋式へ」「トイレットペーパーをシングルからダブルへ」などの要望がありました。それらの要望を叶えつつ「その代わりに、これだけ業務を頑張ろう」と対話を重ねるうちに、社員の目線が変わり、自分ごととして会社を捉えるようになりました。「一人当たりの働くスペースを広げるためには、どのくらいの売り上げを達成すればいいですか?」と社員から質問が出てくるほどです。

 自分の行動で会社が変わる手応えを感じた瞬間から、自然と「らしさ」が出てくるのだと思います。

小林社長 私は中小企業の経営者に対して「あなたの会社は本当にそれでいいの?」と問いたいです。利益を上げることは大切ですが、人生には限りがあります。他人の意見や世間の要請ばかりを気にするのではなく、自分の心に従って「自分が作りたい会社」を作ればいい。それが企業のユニークな個性として出てくるはずです。

友安社長 企業のフィロソフィーは、最初はある意味で「社長のエゴ」でいいと思うんです。若い経営者にアドバイスする時も「いきなり皆の意見を聞くのではなく、まずは一回、自分の会社にする」と伝えています。自分の哲学を徹底的に貫いた後に、社員皆の会社へと広げていけばいい。個のフィロソフィーが社内に浸透して、皆のフィロソフィーになる場合もあります。

 カリスマ社長の一言で会議がひっくり返るような、そんなある種の「余裕」を残すことも、企業には必要なのかもしれません。そうでなければ、AIに経営をさせればいい話になってしまいますからね。

宇田川教授 要請に応えることばかりに追われ、気付けば「経営をしていない」状態に陥っている企業は少なくありません。悔しさや楽しさ、あるいは「おかしい」と感じた違和感など、自分の「B面」の感情にふたをせず、ルールの中で遊び心を持つこと。それこそが、これからの製造業を「誇れるもの」へと変革していく経営者の哲学なのだと感じました。

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埼玉大学大学院人文社会科学研究科教授 宇田川元一氏

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