焼肉店は倒産ラッシュなのに……「焼肉きんぐ」運営が最高益を更新するワケ(2/3 ページ)
業界全体が沈む中での「一人勝ち」は、なぜ起きているのか。決算情報とビジネスモデルを見ていこう。
会計が読める食べ放題はインフレで重宝
焼肉きんぐの看板は100分制の食べ放題で、主力の「きんぐコース」は3718円だ。
物価高の時代、単品注文の焼肉店では会計額が読めない不安がつきまとうが、定額制なら家族の出費が事前に確定する。経済界では「景気が悪くなると食べ放題が流行る」という経験則があるが、インフレによる実質賃金の減少は、食べ放題というビジネスモデルにおいてむしろ追い風になる。
ただし、安さだけが売りではない。焼肉きんぐはビュッフェ形式ではなく、席で注文する方式を貫いている。そのため、客は席を立たずに会話を楽しめる。また、焼肉ポリスと呼ばれる従業員が網交換や焼き方指南で客席を巡回するほか、1皿の量をあえて少なくし、多品種を楽しめるようにしている。
このように、焼肉きんぐは食べ放題を「安く腹を満たせる」という価値だけではなく、エンタメ的な価値も提供することで、値上げ局面でも選ばれているようだ。
このモデルは立地の常識も塗り替えつつある。これまで郊外のロードサイドに出店する戦略を貫いてきた焼肉きんぐは、2022年以降は浅草や川口など首都圏の駅近にも進出するようになった。2025年6月には都心一等地である新宿西口大ガード店を出店するなど、観光客を含む都心の客層にも受け入れられつつあるようだ。
食べ放題業態ゆえのリスクは?
ただし、食べ放題業態は原価率が高くなりやすい点には注意が必要だ。
物語コーポレーションの売上原価率は約35%と外食業界の平均より重く、利益を出すには多くの客を効率よく回すオペレーションが重要になる。この点について、同社の仕組み化は徹底している。
注文タッチパネルの導入はもちろん、仕入れた肉は提携工場に送り、幅・角度まで細かく決めて切り込みを入れることで、包丁を使う店内作業を削減するとともに、やわらかさやタレの染み込み具合を改善した。
席注文の食べ放題でネックとなる配膳作業も、いわゆる「特急レーン」や配膳ロボットで自動化した。仕入れも複数国からの買い付けで価格と品質を両立させているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
トヨタ超えのキオクシア、半値になったフジクラ 同じAI銘柄なのに明暗が分かれた理由
AIデータセンター投資ブームを追い風に、ともに過去最高益を更新したキオクシアとフジクラ。しかし市場の評価は真逆だった。時価総額45兆円へ駆け上がったキオクシアと、高値から半値近くまで売り込まれたフジクラ。両社の差は何か。
「あの時気付いていれば……」 モンスター社員を面接で見抜く、たった一つの重要質問
彼らは「嘘をついている」わけではない。ゆがんだレンズを通して世界を見ているため、彼らにとって「正しいこと=周囲が悪であること」という構図は、疑いようのない真実として映っているのだ。
ニトリHDの時価総額半減……「36期成長神話」が崩壊した、これだけの理由
36期連続成長を成し遂げたニトリが、苦境に陥っている。その原因は、似鳥会長の相場観にあるのかもしれない……。
サンリオ株価、まさかの「ほぼ半値」に……なぜ? ジャパンIPに降りかかった災難の正体
今もなお業績を伸ばしているはずのサンリオ株が、前年の最高値から半値近い水準まで売り込まれている。これはなぜだろうか。決算資料や各地の市場動向を詳細に読み解けば、株式市場の評価とは乖離した実態が浮き彫りになる。
