300億円は「ROI不問」 Olive、Trunkを仕掛けるSMBC、新規事業の神髄は「撤退」にアリ(3/3 ページ)
「Olive」や「Trunk」を相次いで成長軌道に乗せ、生成AI活用に向けて500億円の投資計画も打ち出した三井住友フィナンシャルグループ。そんな同社だが、約10年前はモバイルアプリで競合他行に大きく後れを取るなど、変革が進んでいなかった。堅実なメガバンクは、いかに挑戦を次々と形にできる組織へと変貌したのか。
SMBCが次に挑む「日本経済のパイ拡大」
こうした約10年にわたる地道なカルチャー醸成があったからこそ、SMBCグループはAIという未知の領域にもいち早く巨額の投資を決断できた。「CDIOの300億円とは別に、AI利活用のために500億円の予算を設けました。懸念があっても、多少は目をつぶってとにかく前に転がす。CDIOミーティングを実施してきたことで、経営陣を含めて『一定のリスクを許容しながら進める』ことに慣れているんです」と磯和氏は語る。
そして今、磯和氏が強い熱量を持って注力しているのが、大企業とスタートアップを結び付ける「イノベーション・カタリスト」による取り組みだ。
これまで同社はスタートアップへのファイナンスを大幅に拡大し、目標以上の成果を上げてきた。しかし磯和氏は「日本社会の構造は変わっていない」と危惧する。
「大企業とスタートアップは、同じ日本語を話していても意味が全く違います。大企業の『ちょっと検討します』は早くて3カ月後ですが、スタートアップのそれは『明日から』です。この時間軸や文化の違いを通訳し、結び付ける存在が必要です」
4月から10人の専任メンバーが動き始め、既存事業で蓄積してきた2000社以上のスタートアップのデータなども活用しながら、両者の化学反応を仕掛けている。スタートアップが大企業に買収されるだけでなく、豊富な資金を得たスタートアップが大企業の技術を買収するような、非連続なイノベーションを日本から生み出すことが目標だ。
「僕らのKPIは『日本経済のパイを大きくすること』です。日本の成長は、我々の既存事業の利益に直結します。日本発で世界市場に挑戦する“大谷翔平級”の企業を生み出したい。非連続なイノベーションを起こし、世の中を驚かせることを目指します」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
三井住友「Olive」はどこまで広がるか “ナンバーワン連合”で狙う1200万口座
アカウント数700万を突破したSMBCグループの金融アプリ「Olive」。2027年度末の1200万口座を目標に、PayPayやマネーフォワード、SBI証券などナンバーワン企業と連携し、若者中心のサービスから全世代の生活インフラへと守備範囲を広げている。
「いまだキャッシュレス未対応」の領域、どう攻める? 三井住友カード×世界最大フィンテック提携で「中小店舗のOS化」狙う
日本には400万弱の中小事業者が存在し、その半数近くが飲食・小売といった店舗商売を営む。キャッシュレス化の「ラストワンマイル」は、まさにここにある。
「売上の4.7%が消えている」――企業の“見えないコスト”に変化、動き出すキャッシュレス1000兆円市場
B2Cで進んだキャッシュレス化の波が、ついにB2B決済にも到来。なぜ今、20年動かなかった巨大市場が変わろうとしているのか。その本当の理由とは?