かんぽ生命、AIで営業支援 “郵便局での一言”拾って保険提案へ 寸劇で分かる活用例(2/2 ページ)
1700万人の顧客を抱えるかんぽ生命保険が、営業フローにAIエージェントを組み込んだ。商談準備に奔走する現場がどう変わるのか、デモンストレーションの様子を紹介する。
深夜の保険金請求、複数のAIエージェントが連携して対応
場面が変わり、健太さんとのオンライン面談が終わった。会話は自動で文字起こしされ、話題に上がった家族の思いに関するエピソードも記録される。これまでコンサルタントのメモでは残し切れなかった要素だ。星野さんは、AIが提案する「連絡先の更新」「アフターフォロー計画」などを確認し、実行を指示するだけでよい。
それから1年後、和夫さんが思いがけない事故で入院した。退院後の週末、保険金の請求がまだ済んでいないことに気付いたのは健太さんだ。「息子の自分が代わりに手続きできないか」と考え、深夜にコールセンターへ電話をかける。
応対したのは、米Salesforceが開発した音声対話型AIエージェント「Agentforce Voice」だった。本人確認を済ませると、父の和夫さんの保険は入院・手術ともに給付対象であること、本人の事前同意があるため電話で手続きできることを案内する。さらに、公的機関から直接データを取得したため診断書の提出も不要だと告げ、給付金の振り込み手続きまでスムーズに進んだ。書類のやりとりも、来店して手続きする必要もない。
この通話の裏側では、外部の医療データへのアクセスや支払い査定など、役割の異なる複数のAIエージェントがセキュアに連携し、本来は複雑な手続きを通話中に完了させた。週明け、コンサルタントの星野さんは支払いの完了を確認し、健太さんにフォローの電話を入れた。合わせて、彼が暮らす東京のコンサルタントを紹介した。自律的なAIと人によるフォローの連携が、深夜の不安をその場で解消したのだ。
引き継ぎ支援もAIで “郵便局での何気ない会話”も共有
星野さんの紹介で、健太さんの担当コンサルタントが望月さんに決まった。望月さんは、顧客情報をまとめた業務ツール「Customer 360」を確認。画面には、健太さんのプロフィールや世帯情報、これまでの面談・請求履歴が時系列に沿って表示される。
望月さんの元に、システムから「健太さんの第1子が誕生予定」という通知が届く。父の和夫さんが、郵便局の窓口で話した家族に関する何気ない一言を、AIが拾っていたようだ。グループ間でのデータ連携の同意を得ているため、こうした情報をデータ基盤「Data 360」に蓄積し、健太さんの重要なライフイベント情報として連携できる。
望月さんがAIエージェントに相談すると、過去のやりとりを踏まえて引き継ぎを支援し、お祝いと保険相談の案内を添えたメッセージをAIが作成する。受け取った健太さんは「生まれてくる子のために備えたい」と保険相談エージェントに相談。家族の状況を踏まえた将来予測の提示を受け、その備えをかんぽ生命に託すことを決めた――。
かんぽ生命副社長「担当が代わっても顧客理解が途切れない」
デモンストレーションが示したのは、担当者が代わっても顧客理解が途切れない仕組みだ。窓口での一言さえ、世代も担当者も超えて引き継ぎ、次の安心につながる。「どこに問い合わせても、担当者が変わっても、自分のことを深く理解してくれる。そうした圧倒的な安心感を実現できると考えている」と廣中副社長は語る。
同社が目指すのは、リアルとデジタルの掛け合わせだ。郵便局とコンサルタントの対面の温かさに、デジタルの力を重ね、新しい「安心の基盤」を築く。顧客がふと漏らした体調の変化を覚えておき、1年後の面談で「その後いかがですか?」と声をかけられる。そんなさりげない「寄り添い」が安心を生む。
廣中副社長は「ご両親からお子さまへ、お子さまからお孫さまへ。世代を超えて家庭の歴史を見守ってくれる、そうした信頼のバトンをつないでいきたい」と展望を語る。AIが生み出した時間と心の余裕を、コンサルタントの活動、ひいては経営にどう生かすかが問われそうだ。
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