米スタバ、なぜ「絶好調」の日本事業を売るのか? 本国再建の原資に消える“勝ち筋”の先行き(4/4 ページ)
本場米国が客離れに苦しむなか、日本だけが増収増益を続ける「日米逆転」が起きている。最ももうかっている事業を、なぜ手放すのか。
日本のスタバに何が起きるのか
バーガーキングが成功したのは、出発点が「壊れた事業」だったからだ。縮みきった店舗網には、立て直す余地――すなわち伸びしろがあった。
スターバックス日本は真逆である。すでに国内カフェの頂点に立ち、出店も価格も体験価値も磨き上げられた成熟資産だ。「育てて伸ばす」型の上昇余地は乏しい。
すると、新しいオーナーが残された利益を引き上げるレバーは、事実上2つしかないと筆者は考える。
それは、さらなる値上げか、コスト圧縮だ。しかしこれらの選択肢は、スターバックスの競争力を自ら削る行為に他ならない。
日本のスタバが度重なる値上げに耐えてこられたのは、体験価値を優先するブランド戦略で客離れを抑え込んできたからだ。コスト圧縮によって体験価値が痩せ、値上げが顧客満足度を削るなら、その均衡は崩れる。
皮肉なのは、本国がまさに「効率を追って体験を希薄化させた末の客離れ」を起こしていることだ。本国が反省して原点回帰を目指す間に、日本が米国の失敗をなぞってしまわないか。
もっとも、悲観すべきことだけでもない。
買い手が日本法人の独立性を尊重すれば、現地に最適化した経営判断はむしろ速くなり得る。
これを機に再びIPOすることを選べば、成功を築いた現経営陣のもとで日本のスタバが自走する道も開ける。ブランド、店舗、アプリといった消費者接点は、資本の出し手が代わっても維持されるのが通例だ。買い手が誰であろうと、日本のスタバが明日、別の名前になるわけではない。
問われるのは、その先だ。本当の論点は、売却額の大きさではない。新しいオーナーが短期の投資利益とブランドの長期価値のどちらを優先するかに尽きる。
日本のスタバの勝ち筋を作ったのは、利益を急がない忍耐だった。その忍耐を引き継ぐ買い手が見つかるかどうかに、日本のスタバの命運はかかっているのではないだろうか。
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