2015年7月27日以前の記事
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なぜIBMやウォルマートの採用条件から「大卒」「経験3年」の文字が消えているのかAI・DX時代に“勝てる組織”(2/3 ページ)

多くの企業が「人が採れない」と頭を抱えている。しかし、その原因は労働市場だけにあるとは限らない。今、世界で注目される「スキルベース採用」という考え方と先進企業の実践から、人材獲得競争を勝ち抜くための新たな採用戦略を探る。

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スキルベース採用は「採用基準の引き下げ」ではない

 スキルベースの考え方について「つまり、人が採れないから、大卒以上や経験年数という必須条件をなくして、学歴不問や未経験歓迎にすればいいのか」と受け止める方もいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。

 スキルベース採用とは、採用基準を甘くして妥協することではありません。むしろ逆です。仕事に必要なスキルを、これまでの何倍も解像度高く定義し、候補者のポテンシャルをより精緻に見極めるための高度なアプローチです。

 リクルートワークス研究所のコラムでは、スキルベース採用を「学歴や職務経歴ではなく、スキルを基に選考する採用」と説明しています。そして、従来型の「スクリーンアウト型」、つまりあらかじめ設定した条件に合わない人を弾く採用から、スキルを基に候補者の可能性を積極的に見いだす「スクリーンイン型」の採用への転換であると位置付けています。

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スキルベース採用では、仕事に必要なスキルを解像度高く定義する必要がある

 表面的なネガティブチェックで候補者を切り捨てるのではなく「自社で活躍するための要件を満たしているか」を実務に近い形でポジティブに探しに行く。それが、スキルベース採用の本質です。

採用で失敗する会社が混合しがちな「必須スキル」と「育成可能なスキル」

 スキルベース採用の概念を理解しても、実務に落とし込む段階で多くの企業がつまずきます。その最大の原因は、採用の職務要件を設計する際に、次の2つを明確に分けていないことです。

1. 入社時点で本当に必要なスキル

 入社初日から求められる論理的思考力、コミュニケーション力、未知への学習意欲などのポータブルスキル

2. 入社後に育成できるスキル

 入社後に学習・習得可能な業界知識、自社製品の仕様、特定のツールの使い方、社内ルールなど

 この切り分けができない会社は、優秀な人材を自ら遠ざけています。

 現場のマネジャーから上がってくる求人票には、往々にして「自社が属する業界の深い知識」「自社が導入している特定のツールの使用経験」「類似システムの導入経験」といった条件が並びます。

 現場が「明日から一人で動ける即戦力が欲しい」と願う気持ちは痛いほど分かります。しかし、冷静に考えてみる必要があります。

 業界特有の専門用語や社内システムの使い方は、入社後にOJTや研修を通じて、数週間から数カ月で教えられる可能性があります。これは、育成できるスキルです。一方で、複雑な事象をひもとく論理的なコミュニケーション力や、未知の技術に対する学習意欲、いわゆるラーニングアジリティは、入社後に一朝一夕で伸ばすことが難しいスキルです。これは、入社時点で備わっていてほしい必須スキルと言えます。

 この仕分けをせずに「育成可能なもの」まで採用の必須条件、つまり必須要件に盛り込んでしまう会社は、自ら候補者の可能性を狭めています

 その結果、存在しない「100点満点の完璧な人材」を探し求め、終わりのない採用活動の消耗戦を続けることになります。

 必須スキルと育成可能スキルを適切に切り分け、スキルベースで人材を見るようになれば、これまで見落としていた多様な人材に機会が広がります。

 例えば、実力はあるが4年制大学を卒業していない非大卒人材。優れたポータブルスキルを持つ異業種からの転職者。育児や介護などで離職期間があるものの、高い遂行能力を持つ人。あるいは、社内で全く別の職種に挑戦したいと考えている既存社員。こうした人材が、候補者として見えてくるのです。

 もちろん、理念に共感して「明日から求人票の『大卒以上』を消そう」と早合点してはいけません。求人票の言葉を消すだけでは、スキルベース採用にはなりません。面接官の評価基準を見直し、入社後の育成設計、つまり足りないスキルをどう教えるかをセットで再構築して初めて機能します。

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