シンガポールのドンキで飛ぶように売れる 1パック2000円の「日本産イチゴ」を支える技術とビジネスモデルとは(2/5 ページ)
品種開発から販売までを一貫して手がける農業スタートアップ、CULTA。AIと人工環境を使う高速育種でイチゴの品種開発を大幅に短縮し、独自品種を東南アジアなどに輸出する。手本は、キウイで世界市場を築いたゼスプリ。品種開発とマーケティングを一体で握る「垂直統合」で、農業の構造転換に挑む。
品種改良「10年→2年」を実現 どうやった?
ビジネスモデルの話に入る前に、CULTAの土台にある技術を紹介しよう。
同社の品種開発は、ゲノム編集や遺伝子組み換えではない。異なる親をかけ合わせ、生まれた多数の子から目的に合うものを選び抜く「交配育種」を高速化したものだ。交配育種そのものは150年以上の歴史を持つが、もともと時間がかかる。狙い通りの品種が生まれる確率は低く、有望な個体を見極めるには栽培と選抜を何年も繰り返す必要がある。イチゴでは1品種が世に出るまでに10年前後かかるとされる。
CULTAは、この「成功確率の低さ」と「選抜期間の長さ」という2つの壁を技術で乗り越えた。成功確率を高めるために使うのが、ゲノム解析とフェノタイピング(糖度や硬さなど果実の特性を数値化する技術)だ。
自社で育てた数千個体について、遺伝情報と特性データをひも付け、AIで「どの親同士をかけ合わせれば、甘みが強く硬度があるなどの狙った特性を持つ品種が生まれやすいか」を予測する。やみくもにかけ合わせるのではなく、当たりの確率が高い組み合わせを狙う。
選抜期間を短縮するためには人工環境を活用する。通常の栽培ではイチゴを育ててその品質を評価できるのは年に1回だが、温度や養液を細かく制御した環境で開花を早めることで、年3回の育種サイクルを実現した。試行錯誤を短期間で繰り返せるため、有望な個体にたどり着くまでの時間を大幅に縮められる。
一般的に輸出向けのイチゴは輸送中の傷みを避けるため、熟し切る前に収穫することが多い。しかし、硬く傷みにくい品種なら完熟してから収穫できるため、シンガポールの店頭でも甘い状態で販売できる。「2000円でも売れるイチゴ」の理由はここにある。最大の競合である韓国産より価格が1.5〜2倍ほど高くても選ばれるのは、この品種開発力があるからだ。
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