みずほはなぜ「中小企業」に向き合うのか 銀行が埋めようとする“空白地帯”(4/4 ページ)
みずほフィナンシャルグループは、中小企業向け金融サービスに本格参入した。安価なネット型口座と手厚い支援型という従来の二極化を、UPSIDERとの連携によるAI与信で超えようとしている。銀行の構造転換の試みだ。
AI与信は「失敗の歴史」を超えられるか
中小・零細向けの融資は、みずほにとって新しい挑戦ではない。だが、金融機関が長く挑んではきたものの、人手の壁にはばまれてきた領域でもある。
大企業向けの融資は、1件当たりの規模が大きい。人手をかけて丁寧に審査しても、採算は合う。だが中小向けは、融資額が小さく、件数が多い。1件ずつ人を割いていては、リターンに対してコストが見合わない。この構造が、長く壁になってきた。
AIを使った融資も、日本では失敗例が少なくない。今回の賭けは、その歴史をテクノロジーで上書きできるか、という一点にある。
勝算について、木原正裕社長はこう答えた。「やってみる、ということじゃないですか」。みずほの当期利益は1兆2000億〜1兆3000億円規模。仮に中小向けで与信コストがかさんでも、「大騒ぎする話じゃない」と言う。「リスクがあるからやらない、ということにはならない」。日本の競争力を立て直すには、全方位で成長を支える必要がある、という立場だ。
もっとも、AI与信をどこまで効かせるかは、段階を踏む。UPSIDERのモデルは短期の融資には向くが、長期への適用にはまだハードルがある、と木原氏は見る。
そこで2027年春は、既存の審査モデルにUPSIDERのキャッシュフロー審査を掛け合わせ、最後は人が判断する形で始める。決算書や財務諸表に依存しない完全なAI審査は、2028年春を見込む。
2027年春に投入する新オンライン融資の予告。最短翌営業日で、運転資金から成長投資まで最大3億円をカバーする。キャッシュブーストの短期・小口から、より長く大きな資金へと、AI与信の射程を広げていく段階にあたる
課題は残る。中小に届けるチャネルは、Trunkに比べてなお手薄だ。地銀との連携も、具体策はこれからだ。UPSIDER自身の出口も、1つに定まっていない。みずほの傘下で力をつけてから株式を上場する道を本命としつつ、みずほに全株を買い取ってもらう道も残している。
それでも、みずほは目標を掲げている。2030年度までに、オンライン融資の実行額5000億円。届くかどうかは、2つにかかっている。中小の現場に、どの入り口で届くか。そして、短期の小口で効くAI与信を、長期・大口にまで広げられるか。勝負を分けるのは、このAI与信だ。木原氏自身、そこにまだ壁があると認めている。
2030年度までのロードマップ。オンライン融資実行額は累計5000億円、口座は累計10万口座を目標に掲げる。Trunkが1年で7万口座に達したことを思えば、5年で10万は控えめな数字で、規模より中身で勝負するという構えが読み取れる
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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