みずほはなぜ「中小企業」に向き合うのか 銀行が埋めようとする“空白地帯”(3/4 ページ)
みずほフィナンシャルグループは、中小企業向け金融サービスに本格参入した。安価なネット型口座と手厚い支援型という従来の二極化を、UPSIDERとの連携によるAI与信で超えようとしている。銀行の構造転換の試みだ。
「Trunk、楽天、地銀」同じ市場で動き始めた各行
中堅・中小向けの金融は、いま各行が競って攻め込む領域になっている。みずほは、すでに競合がひしめく市場に、後発で入る形だ。
先行するのが、SMBCグループのTrunkだ。2025年5月に始まった法人向けデジタル総合金融サービスで、月額0円、他行宛て振り込み145円という料金を掲げ、約1年で7万口座を超えた。
口座開設と同時に三井住友カードのビジネスカードを申し込める導線を用意し、SMBCの決済・カード基盤に乗せて広げてきた。2026年1月には、請求書の読み取りやカード払い、補助金活用支援も加えている。
ただし、Trunkはデジタル支店で融資を提供していない。みずほとUPSIDERが融資とAI与信を前面に置くのとは、ここが大きな違いだ。料金だけを見れば、GMOあおぞらネット銀行など低コストのネット系も依然として強い。
差がつくのは、顧客にどう届けるかだ。Trunkは開始から1年で7万口座を獲得した。一方、みずほが掲げる目標は2030年度までにアクティブ口座10万口座。そこまでに5年をかける計画である。
数で押す構図は描いていない。事業責任者を務めるみずほ銀行の秋山智慶氏は、認知の広さで競うのではなく、「真に必要なお客さまに、必要なサービスを届ける」と位置付ける。口座数より、使われる口座を取りにいく構えだ。
組む相手も、各行で違う。住信SBIネット銀行はSansanと組み、請求書管理サービスに銀行機能を埋め込んだ。三菱UFJ銀行は、金融データ連携のMoneytreeと手を組み、データ集約とAI審査を中小融資につなげようとしている。Trunkの請求書カード払いも、外部のフィンテック企業が裏側を担う。銀行対銀行ではなく、銀行とSaaS、カード、データ基盤を束ねた競争に移りつつある。
その中でみずほは、最も踏み込んだ戦略を選んだ。提携にとどめず、UPSIDERの株式の約7割を取得し、2025年7月に子会社として迎え入れた。フィンテックを社外のパートナーではなく、グループ内に取り込む。
楽天グループとも、みずほは資本業務提携を結ぶ。中堅・中小の支援が狙いの1つだが、UPSIDERBANKとの線引きはしない。木原正裕社長は「すみ分けというよりは、とにかく一緒にやっていく」と話す。楽天経済圏に集まる中小とは協業し、リテール金融では幅広く相手を組み替えていく構えだ。
みずほ自身、この市場に急に現れたわけではない。UPSIDERとは共同のベンチャーデットファンド「UPSIDER BLUE DREAM Fund」を1号、2号と立ち上げ、2号には国内の金融機関7社が新たに加わった。カードの連携販売も進め、直近では、UPSIDERのAI技術を活用したスタートアップ向けのシンジケートローンも手掛けている。このサービスは、その延長線上にある。
各行が同じ中小という市場で、別々の接点と座組みを試している。みずほが選んだのは、フィンテックを取り込み、AI与信を軸に据える形だ。だが、その軸そのものが、銀行にとって最も難しい領域でもある。
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