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AIが破壊するIT業界の“人月商売” 「SIerの死」後に“生き残る者”の正体(6/6 ページ)

米Anthropicの機能発表で約8300億ドルの時価総額が消し飛んだ「AIショック」。画面の使いやすさで稼いできたSaaSや、時間と人数を積み上げるSIerの「人月商売」が崩壊の危機に直面している。だが、業界ルールにのっとった複雑な計算(ビジネスロジック)を握る企業は依然として強い。真の構造変化はどこで起きているのか。AIに仕事を任せるための「安全管理」の難所と、「現場派遣型エンジニア」(FDE)の正体に迫る。

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FDEの正体 「顧客のお金で自社製品を鍛える」強さ

 では、こうして開いた市場を取りに行くのは、どんなプレーヤーか。

 注目されているのが、現場派遣型のエンジニアである「FDE」(Forward Deployed Engineer)という新しい働き方だ。エンジニアが顧客の会社に直接入り込み、自社のソフトウェア製品と、顧客の実際の業務との間にある「ズレ」をその場で埋めながら、一気にシステムを完成させる体制を指す。近年、米OpenAIやAnthropicといった名だたるAI開発企業が、自らこの体制を採り入れたことで、日本でも語られるようになった。


従来SIerとFDEの違い

 実践例が、バックオフィス向けAIエージェントサービス「バクラク」シリーズやAIエージェント事業「Ai Workforce」を手掛けるLayerXだ。同社の松本勇気CTOはFDEの役割を「お客さまの本当に求めている成果と、プラットフォーム(自社製品の機能)との間にある隙間(ズレ)を埋めること」と説明する。AIエージェントを業務で使える状態にするまで「普通の会社なら半年から1年かかる。それを1カ月以下で終わらせることもある」という。三菱HCキャピタル向けのリース見積書読み取りエージェントでは、1万時間以上の時間削減を見込む。

 一見すると、顧客先に常駐して開発する従来のSI(システムインテグレーション)と変わらないようにも見える。伊藤氏はその分水嶺を「自社プロダクトの有無」に置く。顧客のカスタマイズ要望を受けたとき、AIによるカスタマイズレイヤーで吸収するものと、自社プラットフォームに取り込むものを出し分ける。「自社プロダクトを、お客さまのお金を使って鍛え続けるのが一番の価値」であり、これを回せる会社は強くなる。逆に「自社プロダクトとして強いものを持っていないのにFDEをやると言っている会社は、結局昔のSIerと何も変わらない」。

 ここに「SIer is Dead」の答えがある。死ぬのは業態ではない。現場で得た知見がどこにも残らない人月の働き方のほうだ。Anthropicショックで市場が値付けし直したのも、AI開発企業に全てが飲み込まれる未来ではなく、この観点だった。空いた市場を取り、統制基盤とビジネスロジックを握るのは誰か。その椅子は、もはや大手SIerの指定席ではない。


FinatextホールディングスCFOの伊藤祐一郎氏(筆者撮影)

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