IT予算の9割が人件費に消える――日本オラクル社長が切り込む「企業最大の課題」
日本オラクルの三澤智光社長が、日本企業のIT課題に切り込んだ。同社長が指摘する「IT投資の構造的問題」「オンプレミスシステムが抱える課題」とは何か。
「日本のIT領域における最大の課題は『投資構造』にある」――日本オラクルの三澤智光社長は、7月7日の事業戦略説明会でこう述べた。
DXやAI活用が進展する中、IT投資やITインフラの在り方が変わっている。旺盛なクラウド需要やAI活用ニーズを追い風に、米Oracleは2026年度(2025年6月〜2026年5月)通期で売上高約10.8兆円に達した。
ITインフラの刷新や高度化が世界的に加速する一方で、三澤社長は日本企業の「IT投資」「IT部門」「ITインフラ」が大きな課題を抱えていると指摘。「日本の足元を揺るがしかねない」と強い危機感をあらわにした。
ITプロジェクト予算の9割が人件費 「これはおかしい」
三澤社長が「最大の課題」と強調したのが、IT投資を巡る現状だ。
「IT関連プロジェクトの予算のうち、約9割を人件費が占めるのが日本のITの状況だ。プロジェクトが終了し、新システムが稼働した後のメンテナンスコストもほとんどが人件費に費やされている。これはおかしい」(三澤社長)
人件費を削減できない要因の一つに、企業が自社で保有・運用する「オンプレミスのミッションクリティカルシステム(停止できない重要システム)」が多く残っている点があるという。
この課題に向き合った企業として、三澤社長が挙げたのがKDDIだ。同社は、ビジネスの裏側で動くミッションクリティカルシステムの大半をOracleのクラウド基盤「Oracle Cloud Infrastructure」に移行した。クラウド移行によって、サーバなどITインフラの保守・運用をベンダー側に任せられる。人件費を含むコスト削減につながり、浮いた費用をAI投資などの原資に充てているという。
三澤社長「IT部門そのものが弱体化している」 どう立て直す?
三澤社長は、IT投資だけでなく「IT部門そのものが弱体化している」とも指摘する。
「(ビジネスが拡大する際、その伸長スピードに合わせて)多数のアプリケーションを作らなければならない。自社だけで作りきれないため、外部に委託することが多くある。すると、IT部門は調整役に回るケースが増えてきた」(三澤社長)
これでは、IT部門が本来持つべき「自社ビジネスの理解」「ITシステムの内製」などの価値が失われてしまう。三澤社長は「このままでは多角的な事業経営が難しくなる」と指摘した。
IT部門の力を取り戻す上で、同社長はクラウドリフト(クラウド移行)が重要だと話す。KDDIは、クラウドリフトによって「IT部門の業務プロセスの効率化」「既存システムの整理や見直し」「内製化による開発・運用の自社管理」などを実現したという。
日本企業の“オンプレシステム”は「本当に不都合な状況だ」
Oracleがクラウドリフトを推奨する背景には、日本のITシステムが抱える問題点があるという。
「正直、いまのオンプレミスシステムはあまり良いことがない。本当に不都合な状況だ。Oracleがなぜクラウドリフトに注力しているのか――。『バラバラのITインフラ』『高額な保守・運用コスト』『進化のないアプリケーション』『ビジネスプロセス』などを全て変えることが理想だ。しかし、その理想形にいきなり到達できる企業は少ない。『せめてITインフラだけでも近代化して、クラウドのメリットを享受しよう』と働きかけてきた」(三澤社長)
ITシステムをクラウドに移行できれば、ITインフラの標準化や運用の効率化を実現できる。さらにクラウド事業者が提供するAI機能やデータ基盤と連結しやすくなるという。将来的にはSaaSを軸にシステムを組み立てることで、最新のAI機能を素早く活用できると日本オラクルは見込んでいる。
「セキュリティパッチは死んでも当てない」……いまだ残る“危ない環境”
セキュリティ対策においても、オンプレミスシステムが障壁になる。高度な生成AI(フロンティアAI)を用いたサイバー攻撃への警戒感が高まる中、日本企業が保有しているITシステムでは早急な対策が難しいというのだ。
「日本企業の基幹システムの多くは、まだオンプレミスにある。ネットワーク、サーバ、ストレージ、OS、仮想マシン環境、山のようなソフトウェア――パズルのような組み合わせで基幹システムが出来上がっている。この環境で、フロンティアAIによる脅威に対応するのは困難だ」(三澤社長)
同社長は「アップグレードなんてとんでもない」「10年以上前のハードウェアやソフトウェアを使い続ける」「セキュリティパッチ(更新プログラム)は死んでも当てない」(※パッチを適用するにはITシステムを一度停止させる必要があるため)という企業が多いと警鐘を鳴らす。「この環境は日本の足元を揺さぶる。この環境を少しでも減らすことが、私たちが本当にやるべきことだ」(三澤社長)
クラウドリフトによってITインフラだけでも最新の状態にし、その後にアプリケーションをクラウドに移行する。これにより、セキュリティ対策をクラウドベンダーに委託できるという。
企業のセキュリティ対策を後押しするため、Oracleはセキュリティ対策関連のトレーニングメニュー「Oracle AI Resilience Training」や、対策支援サービス「Oracle AI Resilience Solution」などを用意。国内でも順次展開予定だ。
日本オラクルの2026年度(2025年6月〜2026年5月)通期業績は、売上高約2850億円で過去最高だった。オンプレミス関連の事業(ライセンス費用やサポートなど)が好調だったという。同社は今後、クラウド基盤のOracle Cloud Infrastructureや、SaaS型の業務アプリケーション群「Oracle Fusion Cloud Applications」などを伸長させたい考えだ。
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