システム刷新でトラブル続きのANA 対応を丸投げされた現場を「見ていない」経営層の罪:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
運賃体系と予約システム刷新に伴うシステムトラブルについて、説明責任を果たさないANA。同社の元CAである著者が、今回の問題点を探る。
リーダーだけが持つ最高の武器
私は常々「リーダーの言葉」の重要性を訴えてきました。
リーダーの言葉で、社員たちは「ちゃんと自分たちのことを分かってくれている」「自分たちのやっていることを見てくれている」と安心し「頑張ろう」と希望を持ち、ためらわずに前進するエネルギーが湧いてきます。
顧客も同じです。リーダーの言葉が届いてこそ「ちゃんと分かってくれているんだ」「大切にしてくれているんだ」と信頼が生まれ、その企業のファンになります。この「言葉の力」こそが、リーダーというポジションについた人だけが手に入れられる、最高の武器です。
「リーダーの言葉」の重要性を示す、有名な前例があります。米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンが直面した1982年の「タイレノール毒物混入事件」です。
市販の解熱鎮痛剤に毒物が混入し、死者が出るという未曾有(みぞう)の危機において、当時のジェームズ・バーク会長は「自社に疑いがある」という段階で、直ちに全製品の製造・販売中止を決断。事件報道からわずか1時間後には、全米に向けて使用中止を呼びかけました。
バーク会長は1万人の全社員に向かって、国民に徹底的に「商品を飲まないように!」と情報を流すよう促し、1億ドルもの巨費を投じて市場から全ての製品を回収させたのです。当時はリスクマネジメントという概念すらない時代。自らの不利益を顧みず、あらゆる手段で「消費者の安全」を最優先にする方針をトップ自らが発信し続けました。
その後、事件は外部の犯行だったと判明しますが、リーダーの明確な言葉と決断は「消費者を第一に考える企業」としての信頼をかえって高めました。事件からわずか2カ月後には、売り上げを事件前の8割にまで回復させたのです。
バーク会長にあったのは、危機感です。いかにこの事件が「『我が社』にとって危機的なものなのか?」という認識があったからこそ、即座に動けた。それは同時に「私たちが大切にすべき顧客の顔」を決して忘れなかったからにほかなりません。
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