小学生が10分のレクチャーで溶接作業 97年続く町工場が導入した「溶接ロボット」の実力(2/4 ページ)
小学生が10分のレクチャーで遠隔での溶接作業を完了させた。そんなロボットを、97年続く老舗町工場が国内で初めて導入した。熟練工不足に悩む中小製造業で、採用や技術継承の常識を変える挑戦を追った。
「誰でも使えるロボット」 父の構想を3代目が形に
「ロボットをもっと身近に。誰もが当たり前に使える道具にしたい」――これは、高丸泰幸氏の父で現社長の正(ただし)氏が、25年以上前から抱いてきた構想だった。
正氏が2代目社長に就任した1985年当時、産業用ロボットといえば、大手自動車メーカーや家電メーカーの生産ラインで、一つの商品を大量生産するための設備というイメージが一般的だった。一方、中小製造業の現場は、製品ごとに仕様が異なる多品種少量生産が多く、ロボットの導入は難しいと考えられていた。
そんな中で正氏は「多品種少量生産でも使えるロボットの普及」を目指していた。その理念のもと、同社は製造現場に合わせてロボットのシステム設計から運用までを一貫してサポートする「ロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)」として、主に中小企業向けに産業用ロボットの導入支援を続けてきた。
「産業用ロボットの課題は、使いたくても操作が難しく、ロボットを操れる人材が現場にいないことです。この現状を、父は長らく現場で見てきました。父の夢を形にするプロジェクトがスタートするタイミングで、私は約6年勤務した銀行を退職し、家業に戻りました」(高丸氏)
2021年3月、遠隔操作溶接ロボットの開発プロジェクトが始動した。慶應義塾大学やスタートアップ企業と共同で開発を進め、高丸氏は進ちょく管理や補助金申請などプロジェクト全体の運営を担当。約3年にわたり、国の補助金約1億円を活用した開発を支えた。
そして、2024年に「ウェルデモート」が完成した。PCと通信環境さえあれば、誰でもどこからでも、遠隔でロボットを操作して溶接できるようになった。
製造業の新しい働き方を、高丸氏自ら実践した。第2子の育児のために在宅で働く中、工場のロボットを遠隔操作して溶接作業を行ったのだ。その様子はメディアにも取り上げられ、「製造業でも場所に縛られず働ける可能性」を示す事例として注目を集めた。
「商品化してからがスタートです。父が目指してきた『誰でも使えるロボット』を現場で当たり前に使われる存在にしていくために、広報活動にも力を入れてきました」(高丸氏)
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