小学生が10分のレクチャーで溶接作業 97年続く町工場が導入した「溶接ロボット」の実力(3/4 ページ)
小学生が10分のレクチャーで遠隔での溶接作業を完了させた。そんなロボットを、97年続く老舗町工場が国内で初めて導入した。熟練工不足に悩む中小製造業で、採用や技術継承の常識を変える挑戦を追った。
溶接工0人になった町工場が導入
ウェルデモートを国内で初めて導入したのが、冒頭で紹介した宝角合金製作所だ。
1929年創業の同社は、銅合金の鋳造業としてスタートし、その後、付加価値を高めるため機械加工にも事業を拡大した。それに伴い、取引先から溶接加工の要望が増えたものの、社内に溶接ができる人材がいなかったため、2〜3社の外注先に依頼して対応していた。
転機が訪れたのは、2011年ごろだ。
「『廃業することになったから、うちの息子を雇ってくれへんかな』と外注先から連絡をもらいました。当時30代だった息子さんともう一人の溶接工、さらに設備をまるごと引き継ぐ形で溶接工程を内製化しました」(勝利氏)
しかし、ほどなくして1人が退職し、溶接工は1人だけとなる。同社は多品種少量生産の製品を数多く手掛けており、1つの製品の溶接に40分ほどかかる。全ての溶接作業を1人で担う状況が続いたことで、身体への負担が蓄積し、体調にも影響が出始めた。家庭の事情も重なり、その溶接工も2022年に退職。自社の溶接工は再びゼロになった。
その後は、社員2〜3人が兼任して対応したものの、多品種少量生産ゆえに技術の習得が追いつかない。品質が安定しないことが大きな懸念点だったと、勝利氏は振り返る。
同社が手掛ける製品の一つに鉄道関連部品がある。溶接不良が人命に関わる事故につながりかねないため、品質管理は最重要課題の一つであった。
しかし高丸氏によると、手作業の溶接では、若手作業員が「まっすぐ」「きれいに」溶接できるようになるだけでも年単位の経験が必要になるという。外注に頼るとコストは増加し、納期は延びる。一方で、内製しようにも人材はすぐには育たない。
「溶接は、3K(きつい・汚い・危険)といわれる仕事です。手元は震え、火花が飛び散り、夏場は暑い。このような過酷な作業環境で、次世代の担い手を確保するのは現実的ではありませんでした」(勝利氏)
仕事を断るわけにはいかないため、宝角合金製作所は再び溶接工程を外注に切り替えた。内製化の手立てがないまま約1年が経過した頃、同社の拓哉氏はあるセミナーに参加する。その中で、高丸工業の正氏による「ロボット自動化」の講演を聞いたことが、再び内製化へかじを切るきっかけになった。
「それまで溶接作業は属人化せざるを得ないものと思い込んでいましたし、ロボットといえば大量生産を行う大手メーカーのラインで使うものというイメージが強かったです。多品種少量生産の現場にロボットを導入する発想は1ミリもありませんでした。その一方で、高丸社長の『人がやりたがらないことをロボットにやらせたい』『うちはロボットの腕1本からでも相談に乗る』という言葉が、頭の片隅に残りました」(拓哉氏)
宝角合金製作所では、それまでも溶接の専門商社に自動化設備の導入について相談していた。しかし、設備のスペックや製品ラインアップの話が中心で、「現場が何を実現したいのか」という議論には至らなかったという。
「高丸工業さんは『結果として何をできるようにしたいか』という目的を丁寧にヒアリングしてくれました。その目的を実現しながら、汎用性を維持した必要最低限のシステムを提案してくれたのです。『本当に現場で使いこなせるのか』という懸念に対しても、具体的で現実的な説明があり、『これならいける』と確信しました」(拓哉氏)
正氏は長年、ロボットは本来、多品種少量生産にこそ最適なツールだと考えてきた。製品ごとに専用設備を導入する方法では対応できる品種が限られるが、ロボットならプログラム(設定)を書き換えるだけで、さまざまな製品の加工に対応できるからだ。
「手書きの仕事がワープロやPCに変わり、あらゆる定型文がフォーマット化されて再利用できるようになりました。属人性の高い溶接の仕事もまた、日々の作業を数値データとして蓄積し、技術を共有・発展させる時代に来ていると考えています」(高丸氏)
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