冷蔵で十分売れていたのに、なぜ「常温」? 「イシイのミートボール」が広げた新市場(2/4 ページ)
冷蔵のロングセラー商品があるのに、なぜ石井食品は常温ミートボールを投入したのか。背景には、防災をきっかけに「食べる場面」を広げる狙いがあった。ベビー用品店など新たな販路を開拓した戦略を探る。
常温ミートボール、なぜ「ベビー用品店」でも販売?
常温商品開発の背景には、防災関連の取り組みがある。同社は、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに備蓄の重要性を認識し、当初は社内備蓄や地域配布用として、おかゆなどの非常食を開発。その後、店舗などでの販売にも広げていった。
転機となったのは2016年の熊本地震だ。社員自ら現地に入り、支援活動をする中で、「非常食という言葉を聞きたくない」という話を耳にしたという。
池田氏は「一口食べたら日常に戻れるようなものが求められていると感じました。非常食という概念を壊し、普段から食べられるものを提案したいという考えが強くなりました」と振り返る。
こうした経験から、日常的に食べながら備蓄する「ローリングストック」の考え方を重視するようになった。さらに2018年ごろ、取引のあった自衛隊から「常温で保存でき、たんぱく質を摂取できる食品を作れないか」と相談を受けた。開発を進める中で、常温保存できるミートボールの商品化へとつながった。
コロナ禍を経て、2024年2月に一般消費者向けに「いつでもミートボール」を発売した。メーカー希望小売価格は216円。冷蔵商品(同140円)より高いものの、石井食品は防災イベントなどに積極的に出展し、非常時だけでなく普段から食べる備蓄食品として、常温のミートボールを提案した。
その結果、食べられるシーンが次第に広がり、アウトドアなどの冷蔵品を持ち歩きにくい場面でも食べられるようになった。加えて、販路も拡大した。冷蔵商品はスーパーなどの小売店や自社のオンラインストア、カタログ販売が中心だったが、池田氏は「ベビー用品店」への展開において手ごたえを感じているという。
石井食品では、卵・乳成分を使わない商品の「いっしょがいいね」シリーズを展開しており、以前からアレルギーに配慮した商品を求める子育て世代との接点があった。その流れから、「いつでもミートボール」もベビー用品店で取り扱われるようになった。
「常温にすることで、冷蔵商品とは違う売り場に商品を置けるようになりました。これまで接点のなかったお客さまにも知っていただく機会が広がっています」と池田氏は話す。実際、「いつでもミートボール」単体の2025年度の売上高は前年比139%と伸長した。
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